第三者行為による傷病とは
交通事故など第三者行為よるケガでも、その事故が仕事中や通勤途上で発生したもの(労災保険扱いになる)でなければ、健康保険で治療を受けることができます。ただし通常の保険診療とは異なり、医療費については健康保険組合や被害者(被保険者・被扶養者)ではなく、加害者が負担することを原則とする「第三者行為による傷病」という取り扱いになります。
「第三者行為」における第三者とは、他人のことをいいます。したがって、交通事故だけでなく、次のような場合も第三者行為による傷病といえます。
- スーパーや飲食店などで設備の欠陥等、店舗が安全保護義務を怠ったことで発生した 事故によるケガ
- 購入食品や飲食店での食中毒
- スキーやスノーボードなどの衝突、接触事故
- 他人の飼い犬に噛まれたことによるケガ
- ゴルフ場で他人の打球によるケガ
- 不当な暴力、傷害行為による負傷 など
医療費の賠償請求権は健康保険組合に
第三者行為による被害者になったとき、治療費などは加害者が負担する損害賠償金から支払われるのが原則です。しかし、実際には加害者が良心的でない場合や、支払い能力がない場合もあります。また、被害者が自費で治療を受けたのでは、自身の負担が大きくなりかねません。
そこで、被害者が治療を受けた際の医療費は、健康保険組合が健康保険の範囲内であらかじめ立て替えておき、その後、加害者側への請求を健康保険組合が行うことが法律で認められています。本来、被害者が保持する損害賠償請求権を健康保険組合が取得することから、これを「損害賠償請求権の代位取得」(※)といいます。
これにより被害者は、健康保険組合への連絡なしに勝手に示談を進めることができなくなります。
- 健康保険組合が代位取得するのは、事故が原因の病気・ケガの治療に関する医療費請求権のみです。自動車等の物損に関する損害賠償については、健康保険組合は関与しません。
代位取得できる期間
事故の発生から示談の成立までの期間(示談金等の支払いが行われた日の前日まで)。
代位取得の範囲
保険給付に実際に要した費用のことで、慰謝料、見舞金など保険給付と直接関係ないものや、入院室料の差額など健康保険で認められないものは範囲外です。
示談と求償権の範囲
示談と同時に損害賠償を全額受ける場合や全額免除した場合は、示談後の保険給付はありません。治った後で支払うという示談の場合は、保険給付額に相当するすべての損害賠償請求権を健康保険組合が代位取得します。
交通事故等の治療を健康保険で受けるとき
自賠責保険の保険金限度額
実際の損害が保険金限度額を超える場合は、その超過分を加害者が負担(加入している任意保険でもよい)します。
1. 傷害を受けた場合(1人につき)
- 傷害による損害のとき…120万円(限度額)
慰謝料1日につき4,100円、休業補償費1日につき5,500円。ただし、それ以上の休業損害がある場合は1日につき19,000円を限度として実費を補償。 - 後遺障害による損害のとき…障害等級に応じて75万円~3,000万円
2. 死亡した場合(1人につき)
- 死亡による損害のとき…3,000万円(限度額)
- 死亡に至るまでの治療費等…120万円(限度額)
万が一、交通事故にあってしまった場合は
事故がおきたときは、ショックで冷静な判断を失うことがあります。次のチャートを参考にして冷静に対処しましょう。
1.まずは警察に連絡
警察官の立ち会いのもと、現場の状況が確認されます。この手順を踏まないと、あとで必要となる「交通事故証明書」が発行されません。また、軽傷でも必ず「人身扱い」で処理をしてもらってください。「物損扱い」だと、健康保険で診療できない場合があります。
「交通事故証明書」は、交通事故が発生した都道府県の自動車安全運転センター事務所が交付します。所定の郵便振替用紙(警察署、派出所、損害保険会社、農協等にあります)で申請してください。
2.加害者を確認
加害者の氏名、連絡先、運転免許証、車のナンバー、車検証などをしっかりと確認してください。事故の目撃者がいれば、その方の氏名、連絡先を聞くとともに事故の状況をできるだけ詳しくメモしておきましょう。
3.病院を受診
軽いケガでも、あとで後遺症が出るおそれがあります。必ず医師の診察を受け、診断書には詳しく症状を記入してもらってください。また、TJKへの届け出の際に必要となりますので、診断書は大切に保管してください。
4. TJKに連絡
健康保険で診療を受けたときは、必ずTJKに連絡するとともに、事業所経由で必要書類を提出してください。届出があってはじめて、TJKが加害者に支払った医療費などを請求することができます。
5.示談は慎重に
ケガの治療が済んだからといって、気軽に示談に応じないでください。時間が経ってから後遺症が出るおそれがあります。示談をしたあとで、後遺症がでた場合の医療費は自己負担となってしまいます。
また、勝手に示談をして、加害者から直接損害賠償を受けていたり、加害者を独断的に免責していたりするような場合は、TJKは保険給付を行えなくなります。場合によっては、被害者であるご本人に支給済みの治療費等を返納していただくことにもなります。
手続き方法
交通事故など第三者行為による病気やケガが発生したときは、ただちにTJKにご連絡ください。
事故の状況等をお伺いしますので、ご本人様または状況をよく知るご家族様等からの連絡をお願いいたします。
TJKへの提出書類
届出書・申請書は直接TJKへご請求ください。
第三者の行為による傷病届・事故状況発生報告書
添付書類
交通事故証明書、治療費等支払い誓約書、念書、自動車損害賠償責任保険及び任意保険加入状況
- 診断書
- 物損事故のとき…人身事故入手不能理由書
- 死亡のとき…戸籍謄本および死亡診断書
- 示談をしているとき…示談書(写し)
よくあるご質問
交通事故に巻き込まれた場合、医療費などすべての損害を加害者に請求するのは当然です。しかし、ケガの治療は急を要しますし、加害者との話し合いには時間が必要な場合が多いものです。
このようなケースでも、健康保険で治療を受けることができます。ただし、この場合はすぐにTJKに事故による治療を受けたことを連絡し、必要書類を提出してください。この届出があって、初めて健康保険組合は交通事故によるケガであることを知り、加害者に健康保険組合が支払った医療費などを請求することができるからです。
本来、加害者が支払う医療費をTJKが支払えば、そのお金はもともとみなさまからの保険料などですから、それをムダに使うことになります。
後日、交通事故であることがわかり、加害者から損害賠償を受けていたり、免責していたりするような場合は、TJKは被害者であるご本人に治療費等を請求することもあります。
お問い合わせ先
東京都情報サービス産業健康保険組合
給付グループ
〒102-8017 東京都千代田区富士見1-12-8 TJKプラザ
TEL 03-3239-9817 FAX 03-3239-9735