第127回健康教室特別開催-健康企業宣言Step1-銀の認定にむけた勉強会

講演③健康企業宣言(Step1)の取り組み項目のポイントについて

講師:近藤 麻美 氏
(TJK事務職 健康経営アドバイザー)

TJKの中でもすでに91社が銀の認定を取得

講師:近藤麻美氏

「健康企業宣言」は、健康経営を実戦するうえでの手法の1つで、企業全体で健康づくりに取り組むことを宣言し、一定の成果をあげた場合に「健康優良企業」として認定される制度です。これはTJK独自の事業ではなく、健康保険組合連合会東京連合会(以下、健保連東京連合会)が参加する健康企業宣言東京推進協議会が共同で行っている東京都の取り組みとなっています。

なお、東京都以外でも経済産業省が実施している健康優良企業認定制度として、「健康経営優良法人認定制度」があります。こちらの制度は「大規模部門」と「中小規模部門」で分類されていますが、この「中小企業部門」でご申請をするには、東京都で実施している「健康企業宣言」に参加し銀の認定を取得していることが必須となりますので、ご注意ください。

「健康企業宣言」は2016年からスタートし、2019年6月末の時点で1655社が健康企業宣言をし、そのうち747社が銀の認定を取得しています。このうち、TJK所属の企業は、宣言社数は149社、銀の認定取得社数は91社となっていて、東京都の総合健保組合の中でもトップクラスの数を誇っています。

全従業員に周知し、企業全体で取り組むことが重要

ここからは、実際の申し込み方法等についてご説明します。まず、応募用紙の「健康企業宣言Step1」に必要事項を記入し、郵送またはFAXでTJKに提出します。その後健保連東京連合会で受付が完了すると、「宣言の証」が交付されます。この「宣言の証」が届いたら、全従業員に「健康企業宣言」に参加したことを周知してください。自分たちの会社が従業員の健康づくりに積極的に取り組んでいるということを全従業員に周知することで、健康経営の取り組みがしやすい雰囲気になりますし、従業員自身の健康意識にも変化が生まれるはずです。従業員の意識も変え、会社と従業員が一緒に取り組んでいくという意味でも、従業員への周知は大事なポイントとなります。また、自社のホームページや広報誌などに載せたりすることで、健康経営に取り組んでいる企業としての対外的なアピールにも活用できます。

「健康企業宣言」の宣言期間は1年間となり、宣言日から1年後の月末までに「実施結果レポート」等の必要書類を提出していただきます。取り組みの結果、1年経過してもまだ基準となる80点以上が見込めない場合でも、この宣言期間は更新することができるので、1年間という期間にとらわれずに申し込みをしてください。

一定の成果をあげ、銀の認定を受けた場合は、「健康優良企業認定証」が交付されます。同時に、銀の認定のロゴマークも付与されるので、ホームページや名刺に入れるなどしてご活用ください。

確実に点を獲得するために、押さえておきたいポイント

銀の認定の取り組み内容は全部で18項目あり、大まかに分類すると「健診等」「健診結果の活用」「健康づくりのための職場環境」「食」「運動」「禁煙」「心の健康」の7分野となります。全18項目の採点方式で、合計80点以上を獲得すると銀の認定を取得することができます。

配点は項目ごとに異なり、「健診等」の分野だけで約半分を占めています。すでに健診受診率が80%の企業であれば、銀の認定は非常にとりやすいのではないかと思います。

ここからは、項目ごとの取り組み方や提出書類などのポイントを紹介します。

従業員のみなさまは健診を100%受診していますか?

健診受診率80%で満点の20点を獲得できます。健診受診率はTJKで確認がとれるので、不明な場合はお問い合わせください。

40歳以上の従業員の健診結果を、健康保険組合へ提供していますか?

特定健診の受診率により評価し、受診率80%で満点の20点を獲得できます。受診率については、直営健診センター、または契約健診機関で受診していれば、健診結果を健保組合に提供しているということになります。受診率を上げるためには、受診を本人任せにはせずに、受診日を会社で決めたり、未受診の従業員には直接的に受診勧奨をするなど、会社側がアシストすることが有効です。

健診の必要性を従業員へ周知していますか?

健診の案内だけで終わるのではなく、健診の必要性まで含めた周知をすることで満点の5点を獲得できます。昨年度までに銀の認定を取得した会社のうち、90%以上が5点を獲得していますので、比較的点数を獲得しやすい項目です。ここはぜひ5点を狙うことをお勧めします。
周知の方法としては、社内ウェブやイントラネット、全員へのメール一斉送信が評価につながりやすいかと思います。健診の必要性についての例文などはTJKのホームページでも用意しているので、参考にしてください。

健診結果が「要医療」など再検査が必要な人に受診を勧めていますか?

再検査や精密検査が必要な従業員に対して、直接的な受診勧奨を行っているかがポイントとなります。全従業員に一斉に「再検査未受診の方へ」という形では、減点の対象となってしまいます。該当者へ受診勧奨をするためには、健診結果をすみやかに回収し、要再検査の該当者を把握する必要があります。個別・直接的な受診勧奨が難しい場合には、まずは一斉メールでもかまわないので、要再検査の該当者に周知することで、3点は獲得することができます。周知方法は前項目と同様に、社内イントラネットや個人宛てメールが評価につながりやすいと思います。

健診の結果、特定保健指導となった該当者は保健指導を受けていますか?

特定保健指導の実施率50%以上で満点の5点を獲得できます。採点結果状況を見てみると、5点獲得は全体の45.4%、1点獲得は43.1%となっており、まだ取り組みが行われていない会社が多く見られます。この項目は難易度がやや高いですが、特定保健指導に該当する従業員を把握し、保健指導を受けるよう、社内アナウンスや個別対応をすることが実施率を上げるポイントになります。

職場の健康づくり担当者を決めていますか?

健康経営に取り組むにあたり、会社がきちんと窓口となる担当者を任命しているかがポイントとなります。担当者は1名ではなく、複数名でもよいですし、安全衛生委員会などのメンバーから選任していただいても結構です。従業員の健康づくりには常に管理や周知が必要となるため、担当者は決める必要があります。

従業員が健康づくりを話し合える場はありますか?

担当者が定期的に集まって、健康づくりに関する話し合いの場を設けているかどうかを評価します。会議、ミーティング等、名称は問いません。多くの会社で、安全衛生委員会の場で話し合いをしているというケースがみられ、95%の会社が満点の5点を獲得しています。また、安全衛生委員会とは別に健康企業宣言、健康経営に特化した話し合いの場を設けるなどすると、健康経営の取り組みがより進めやすくなるかと思います。
添付書類は、会議録や議事録の写しが評価されやすいと思います。なお、継続性を確認するために、議事録の写しは1回分ではなく、数回分を用意してください(3回分くらい用意すると確実)。また、6カ月以上の継続した取り組みを確認するので、提出時点の半年前からの議事録を添付してください。

健康測定機器等を設置していますか?

健康測定機器等の設置は、本社だけでなく、支店や営業所などにも設置が必須です(本社のみに設置の場合は減点対象となる)。また、日常的に自分の体調のわかる測定器が求められるので、血圧計や体組成計などが望ましいです。ちなみに、体温計だけでは評価が難しくなります。
添付書類は、健康測定機器を設置したことを知らせる周知文と、実際に設置した健康測定機器の写真をセットで提出すると評価されやすくなります。写真以外では、使用管理簿の写しなどでもよいでしょう。

職場の健康課題を考えたり、問題の整理を行っていますか?

健康づくりについて話し合う場で、健康経営に取り組む中での現状の課題の洗い出しを行うなど、健康企業宣言、健康経営の目線での話し合いを行っているかどうかがポイントになります。
添付書類は、会議録や議事録の写しが評価されやすいと思います。なお、継続性を確認するために、議事録の写しは1回分ではなく、数回分を用意してください(3回分くらい用意すると確実)。また、6カ月以上の継続した取り組みを確認するので、提出時点の半年前からの議事録を添付してください。

健康づくりの目標・計画を立て、実践していますか?

健康づくりに対する目標を掲げて、その目標に沿った年間スケジュールを作成すると評価につながりやすくなります。具体的にどのような目標を立てたらよいかわからないという場合は、「健康企業宣言Step1」の7項目を目標として挙げていただき、これに沿った年間スケジュールを立てていただくとわかりやすいかと思います。あまり難しく考えずに、大まかな計画でも結構です。
添付書類は、話し合いの議事録の写しだけでなく、必ず目標、計画までわかるものを添付してください。その際、作成した日付もわかる資料が必要です。

従業員の仕事中の飲み物に気をつけていますか?

従業員が糖分の多い飲み物、カロリーの高い飲み物を飲み過ぎないように配慮しているかどうかを評価します。糖分のとり過ぎが体に及ぼす影響について周知したり、社内に設置している自動販売機の飲料を見直したりといった実績も評価されます。その場合、飲み物を変えた目的の周知と一緒に、自動販売機の飲料の改善前と改善後の写真を添付すると評価につながりやすくなります。
体への影響等、専門的な情報については、TJKが発行している広報誌「へるすあっぷ21」にも掲載しているので、その一文を引用して、周知にご活用いただけたらと思います。また、保健師や栄養士などを会社に招いてセミナーを実施することなども評価につながります。

日頃の食生活に乱れがないか声掛けをしていますか?

従業員が栄養バランスのとれた食生活となるよう、情報提供や啓発を行っているかどうかを評価します。⑪番の飲み物についてと同様に、偏った食生活が体に及ぼす影響といった知識の周知が評価につながります。ここでもぜひ、「へるすあっぷ21」を活用してください。実践としての事例は、朝食の提供、サラダ類の提供なども評価されています。
また、保健師や栄養士などから、飲み物と食生活についてまとめてセミナーを実施した場合は⑪番と⑫番の添付書類は同じものでもかまいません。ただし、セミナーの実施日とそれぞれの内容がきちんと網羅されている書類を添付するようにしてください。

始業前などに体操やストレッチを取り入れていますか?

会社全体で体操やストレッチを実施していて初めて、満点の3点を獲得できます。しかし、全社的に取り組めている会社はかなり少ないため、3点を獲得しているのは全体の34.8%と低い割合となっています。ただし、ストレッチの重要性の周知だけでも2点は獲得できるので、ここは2点狙いで取り組んでもよいかと思います。
ちなみに、3点を獲得している会社の取り組みでもっとも多いのが、朝のラジオ体操です。なお、体操やストレッチを実践していても、部署やグループ、個人任せになっている場合は3点を獲得できないので、ご注意ください。

階段の活用など歩数を増やす工夫をしていますか?

階段の活用はあくまでも代表例で、歩数を増やすためのさまざまな取り組みが評価対象となります。たとえば、会社全体で実施したマラソン大会、TJK事業で行っているスマホウォーキング大会への参加なども評価されます。なお、そうしたイベントの開催の周知だけでは評価につながらないので、実施した記録まで確認書類を用意してください。添付書類としては、マラソンやウォーキング大会の開催の周知文と、実際の実施報告の周知や会議で報告された際の議事録などを一緒に提出すると評価されやすくなります。

従業員にたばこの害について周知活動をしていますか?

喫煙や受動喫煙がもたらす健康被害の情報を従業員に周知しているかがポイントとなります。単に「禁煙しましょう」という周知だけでは評価につながらないので、たばこによる健康被害についての内容を必ず盛り込んで周知をしてください。たばこの健康被害の情報についても、TJKのホームページに掲載しているので、ご活用ください。

受動喫煙防止策を講じていますか?

敷地内全面禁煙や喫煙室に扉が設置されているなど、完全な受動喫煙の防止に取り組んでいるかどうかがポイントになります。ご注意いただきたいのは、屋外のゴミ置き場や駐車場付近に喫煙所を設置している、あるいは普段は使用していないフロアの給湯室を喫煙所としているなどの場合です。これらの場所は喫煙者以外の人も使用する可能性があるため、受動喫煙防止策を講じているとは認められません。喫煙所は、非喫煙者が完全に受動喫煙をしないような場所に設置してください。
添付書類は、受動喫煙防止の周知実績と、実際の喫煙場所の写真や図面などが評価につながりやすいと思います。また、入居しているビルの館内すべてが禁煙の場合は、ビルの規程の写しなどでも結構です。

管理職などが、従業員に声掛けを行っていますか?

従業員の心の健康状態に日常的に配慮しているかどうかを評価します。単に声を掛けるだけであったり、“ストレスチェックを行っている”、“定例的なミーティングで個人の体調を伺っている”、などでは評価につながりません。重要なのは、メンタルヘルスケアに特化した取り組みをしているかどうかです。たとえば、「管理職がメンタルヘルスセミナーに参加し、その研修結果をフィードバックしている」、「部下のメンタルヘルスケアのために日々、個々への取り組みを実施している」、などです。
ただ、満点の3点を獲得している会社は全体の45.8%となっており、難易度の高い項目です。ただ、管理職がメンタルヘルスセミナーに参加するだけでも2点を獲得できるので、まずはそうしたセミナーへの参加を推奨していただけたらと思います。TJKでも管理職のメンタルヘルスセミナーを実施しているので、ぜひご活用ください。

気になることを相談できる職場の雰囲気か?

従業員が心の健康に関して常時相談できる場所を設置・周知しているかどうかを評価します。会社独自で開設しているメンタルヘルス相談窓口でもよいですし、TJKメンタルヘルス相談窓口を利用して、周知していただいても結構です。重要なのは、誰もが公平に相談できる窓口であるということです。まれに、上司が相談窓口になっているというケースがありますが、これは評価されないので、ご注意ください。これから取り組みされる場合は、TJKのメンタルヘルス相談窓口の周知をしていただくことで、3点を獲得できるので、ぜひご活用ください。

以上、全18項目のポイントをご説明しました。TJKの事業を活用して取り組んでいただくことで、認定基準の80点にグッと近づくことができますので、ぜひ健康経営のサポートとしてご活用ください。

採点や添付資料に関する注意事項

ここからは、全体に共通する注意事項をいくつか紹介します。

銀の認定の採点においては、本社のみではなく、支社や営業所も含めた企業全体の取り組みとなっているかがポイントとなります。周知については全従業員が閲覧できること、さらに⑧番の「健康測定機器の設置」、⑯番の「受動喫煙防止策」については、審査上、全支社分の確認書類の提出が求められるので、きちんと資料をご用意ください。

また、取り組み期間は6カ月以上あるか、ということもポイントです。提出日から半年以上前からの実績であるかどうかを確認するので、必ず周知日の確認できる書類を用意してください。また、健康企業宣言を行ってからの実績が判断対象となるため、過去に周知したことがある内容であっても、宣言日以降の実績を必ず作るようにしてください。

次に、添付書類についてです。これは必須事項ではなく、お願い事項になりますが、添付資料は極力A4用紙で統一していただくと助かります。とくに、写真を添付する場合などは小さい用紙だと見落とす可能性もあるため、A4用紙に貼付してご提出いただくようお願いします。また、資料が複数枚になる場合は、できるだけホチキスではなく、クリップを使用してください。

TJKと一緒に健康経営に取り組んでいきましょう!

銀の認定を取得すると「健康優良企業認定証」が授与されますが、こちらの有効期限は1年間となっています。認定期限月の1日から月末までの期間中に更新手続きを行うことで、銀の認定を更新することができます。

銀の認定を取得された企業については、Step2「金の認定」の申請が可能となります。金の認定では、本人だけでなく、従業員のご家族に対しての取り組みが加わるほか、両立支援や過重労働対策についての取り組みも必要となってきます。銀の認定に比べると難易度は上がりますが、引き続きTJKがサポートをしてまいります。

健康企業宣言はけっして難しいものではないので、ぜひTJKの事業を活用して、銀の認定取得に向けて取り組んでいただけたらと思います。

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