平成27年7月30日(木)、TJKプラザにおいて、第114回健康教室を開催しました。今回は、「タバコの害と禁煙について」と題して、落語家の三遊亭白鳥師匠をお招きし、ご講演をいただきました。
愛煙家のおじいちゃんが自分の肺の中に生息する“ニコチン大王”から、タバコの煙が自分や周りの人の健康を害していたことを知らされるという創作落語『ニコチン大王をやっつけろ』も披露。笑いを交えながら、喫煙による害、および禁煙の大切さなどについて語っていただきました。その様子をレポートします。
講師 三遊亭 白鳥 氏
社団法人落語協会所属落語家・真打ち
三遊亭円丈に入門し、2番目の弟子になる。2001年に真打ち昇進後、独自の創作落語で注目され、今大変人気のある若手真打ちである。
平成17年には埼玉県彩の国芸術劇場落語部門で大賞を受賞。
小説から自然保護まで幅広く活躍中。都内の寄席でも若手ながらトリを努めている。
私は若いとき、ずっとタバコを吸っていました。しかし、あることがきっかけでピタッとやめて、それから15年くらいはずっと吸っていませんでした。ところがまた、あるときを境に、再び吸い始めています。なので、吸う人とやめた人、どちらの気持ちもわかります。
まずは、タバコを吸う方にぜひとも実践していただきたいことをいくつか紹介します。
タバコを吸うというのは、一種の気分転換です。そこで、タバコが吸いたくなったとき、タバコ以外のことで気分転換する方法を紹介しましょう。タバコというのは、唇にはさんで顔の筋肉を使います。なので、同じように顔の筋肉を動かすと、気分転換になります。顔にはたくさんの神経や筋肉があるので、それを動かすことによって、気分も変わるというわけです。
顔のマッサージ(1)
- 左右の頬に手をあて、グリグリと大きく回すようにしながら、頬の筋肉を動かす。
- 次に、手のひらで両側から頬を強く押して、タコのように口を突き出す。
顔のマッサージ(2)
- 人さし指、中指、薬指の3本を左右のこめかみにあて、痛気持ちいいくらいの強さで、グリグリと後ろ方向に数回回す。
- 次に、前方向にも同様に回す。
タバコを吸う人は、肺を広げることも大切です。今、スマホやパソコンを使う機会が多いですが、そういうときはどうしても前かがみになりがちです。そのような姿勢だと、肺がつぶれやすくなります。そこでさらに喫煙すると、肺がますます弱って、新鮮な空気が取り込めなくなります。そのため、意識して肺を広げることが大切なのです。
肺を広げるトレーニング
- イスに浅めに座り、頭頂部を上から引っ張られるイメージで、坐骨の上に真っ直ぐ座る。
- 「気をつけ」をするように、腕を真っ直ぐ下ろす。
- 左右の手のひらを外側に向け、そのまま上がるところまで腕を上げる。
- 左右の肩甲骨をくっつけるように、腕をグッと後ろに引っ張って胸を張る。
いつもどおりに「気をつけ」の姿勢をとってみてください。このとき、肩が前に出ているのはよくありません。人間の頭は、ボウリングの球と同じくらいの重さがあるので、肩が前に出ている状態だと体に負担がかかり、ストレスにもなります。すると、イライラしてタバコを吸いたくなるのです。なので、肩を後ろに引いて、肩甲骨と肩甲骨を寄せるように意識することが大切です。
肩甲骨は、非常に多くの筋肉とつながっている重要な部分です。人間にとってのエンジンのようなもので、このエンジンを動かすことで、体が活性化します。実はこれが、タバコにも関係してくるのです。
タバコというのは、体を陰にしようとします。タバコに含まれるニコチンには、血管を収縮させる働きがあります。血管が収縮すると、血の巡りが悪くなるため、体が陰に向かうのです。
元気な体にするためには、体を陽にしなければいけません。そのためにも肩甲骨をしっかり動かすことが大事なのです。
次に大切なのが、呼吸です。先ほどもいったとおり、タバコを吸うと血管が収縮します。その血管を広げるためにも、大切なのが腹式呼吸です。
お腹に手をあてて、ここにビーチボールがあるのをイメージします。そのビーチボールをつぶすように、口からフーッと息を吐き出してお腹をへこませます。すべて吐ききったら、息を吸ってお腹をふくらませます。これを何回かくり返します。
腹式呼吸は、気分転換にもなります。なので、イライラしてタバコを吸いたくなったときには、腹式呼吸をすると気持ちが落ち着きます。
体を活性化するためには、声を出すこともとても大切です。会話をしたり、大きな声を出したりすることで体は活性化し、縮んだ血管も広げることができます。
体を活性化する発声法
- イスに座り、肩甲骨同士をくっつけるようにして胸を張る。
- 腹式呼吸を3回行う。
- 両腕を体の脇におき、力を抜いてブラブラさせる。
- 顔を上に向け、のどを開放させる。
- 大きな声で「あ、あ、い、い、う、う、え、え、お、お」と発声する。
健康に役立つさまざまなプチトレーニングを紹介してくださった白鳥師匠。次に、お待ちかねの創作落語「ニコチン大王をやっつけろ」を披露してくださいました。
「ニコチン大王をやっつけろ」──あらすじ
ヘビースモーカーのおじいさんが、夢の中で自分の肺に生息する“ニコチン大王”と対面。長年の喫煙で傷つき、ヤニだらけになった自分の体の中を目の当たりにする。
まだ自覚症状はないものの、おじいさんの体はガンだらけ。タバコの毒は、血液の中にも染み渡っている。その血液が全身を巡り、もっとも毒が凝縮された血液がたどり着くのが膀胱。その証拠に、ヘビースモーカーの有名人の多くが膀胱がんで亡くなっている。
「タバコでいつ死んでもいいと思っている。わし一人が死ねばいいんだろう」と開き直るおじいさん。ところが、副流煙によりいかに周囲の人たちに大きな害を与えているかをニコチン大王から聞かされ、愕然とする。
落語でも出てきましたが、副流煙は非常に広範囲にまで害を及ぼします。実際、20メートル以上先まで飛ぶということが実験でも確認されています。ですから、タバコを吸う人には、自分のタバコがどれだけ周りの人に害を与えているかという想像力を持ってもらうことが大切です。
タバコを吸ったことによって、その煙が周りに広がる。あそこで小さな子どもが遊んでいる。あの子の肺に入ったらどうしよう、ここで吸うのはやめておこう。そういう想像力。それが増すと、タバコをやめようという気持ちになってきます。
想像力を持たせるには、どうしたらいいか。それには、落語を聞くのがいいんです。落語では、道具は扇子と手ぬぐいしか使いません。それだけで、しぐさによっていろいろなものを表現するので、想像力が豊かになるというわけです。
また、落語のいいところは、両方の気持ちになれる、いろいろな見方ができるということです。なので、禁煙を勧める方も、なぜこの人はタバコを吸ってしまうのか、いろいろな見方をしてください。家庭がうまくいっていないのか、空腹をまぎらわせるためなのかなど、いろいろな見方をすることで、禁煙に導く糸口が見えてくるかもしれません。
私は、若いころからずっとタバコを吸っていましたが、31歳くらいのときにのどの調子が悪くなり、タバコを吸うとむせて苦しくなりました。こんなに苦しいんだったらやめようと思い、気がつくと2週間吸っていませんでした。あれだけタバコを吸いたいと思っていたのに、2週間吸わなくても大丈夫なんだ、だったらやめよう、というのがきっかけでやめました。実は、これと似たような経験をしている人は、とても多いんです。
このように、タバコをやめるきっかけというのは必ずあります。そういうときに誰かに後押しされたことで、やめられたという人が大変に多い。ですから、もしそういうチャンスがあったら、ぜひとも後押しをしていただけたらと思います。
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