平成30年7月25日(水)、TJKプラザにおいて、第123回健康教室を開催しました。今回は、日本を代表する、海外でも活躍中のトップ・ベリーダンサーのMAKI氏を講師にお迎えしました。MAKI氏が指導している「ベリササイズ」は、スポーツ医学に裏付けされた近代エクササイズと古代ベリーダンスのテクニックを融合した新しいエクササイズです。さまざまな不調改善に役立つベリササイズに加え、食事や睡眠のポイントなども紹介していただきました。その模様をレポートします。
講師 MAKI 氏
(ベリササイズのパイオニア)
日本を代表する、海外でも活躍のトップ・ベリーダンサー。ベリーダンスの中でも最もレベルが高いと言われる本場エジプトをはじめとしてアメリカ・ドイツの有数ダンサーに師事。3年間の海外生活帰国後、渋谷、青山、赤坂をベースとする「MAKIオリエンタルダンスカンパニー」を設立。代表として、年間のべ200名以上の生徒を指導、その指導力は、中学校・高校の教員免許を持つだけあり、非常にきめ細やかで、1人1人の良い個性を引き出すマネージメントスタイルとして定評がある。
また、本業のほか「ベリーダンス・エクササイズ」講師など数多くのメディアでも活躍中。
体重に縛られず、バランスのとれたきれいな身体をつくる
ベリーダンスはエジプト発祥のダンスで、約4000年の歴史があります。当初は、五穀豊穣や子孫繁栄を祈願するために踊られていましたが、その後、踊るときのスタイルや意味合いなどが少しずつ変化しながら、現在の形になりました。
これだけ長い間、踊り続けられてきたのは、身体にも多くのメリットがあるからです。さらに、数々の研究から、ベリーダンスのテクニックや動きには、老若男女を問わず、すべての人に役立つさまざまな効果があることもわかってきました。私は、このことをより多くの方に伝えたいと考え、「ベリササイズ」という新しいエクササイズを考案したのです。
ベリササイズは、単にやせることを目的にしているのではなく、「身体を彫刻する」ことを目指しています。たとえば、細身だけれどお腹がたるんでいる人と、多少ふくよかでもメリハリのある体形をしている人では、どちらがきれいに見えるかといったら、明らかに後者でしょう。つまり、体重ばかりに縛られるのではなく、全体的にバランスのとれたきれいな身体をつくっていきましょう、ということです。
また、ベリササイズのもっとも大きなテーマは、アンチエイジングです。ここでいうアンチエイジングとは、脂肪を吸引したり、シワを伸ばしたりすることではなく、細胞レベルで若々しさをキープするアンチエイジングです。
食事で余分な脂肪をためないための5つのポイント
ベリササイズにおけるアンチエイジングには3つの柱があり、1つめは食事、2つめは運動、そして、3つめは睡眠です。
まず、1つめの食事についてです。食事をすると、食べたものは消化・分解され、糖となって血液中に取り込まれます。すると、すい臓はそれを察知して、インスリンを分泌します。インスリンは、体内に取り込まれた糖を皮下脂肪や内臓脂肪として蓄える働きがあります。これは、人間を飢餓から救うために備えられた大事な働きですが、食べ物が豊富にある現代では、むしろ問題となるのは肥満です。
血糖値(血液中の糖分)が上がると、インスリンが大量に分泌され、それだけ多くの脂肪が蓄えられることになります。これを防ぐには、血糖値をコントロールして、インスリンが過剰に分泌されないようにすることが大切です。そのためのポイントを5つ紹介しましょう。
- ①食事は、食物繊維⇒たんぱく質⇒炭水化物の順に食べる
最初に食物繊維が豊富な野菜を食べ、次に肉・魚・豆類などのたんぱく質、最後にご飯などの炭水化物を食べる。この順に食べるだけで、血糖値の上昇がゆるやかになるため、インスリンの分泌量を約3分の2に抑えることができる。 - ②よくかんで食べる
よくかんでゆっくり食べることで、血糖値の上昇がゆるやかになり、下がるときもゆるやかに下がる。すると、インスリンの分泌量が抑えられるため、脂肪をため込みづらくなる。 - ③ 間食は食後2時間経ってから
食後2時間は血糖値が高い状態なので、そこで甘いものを食べると、インスリンがさらに出てしまう。食後2時間を過ぎてから食べたほうが、脂肪になりにくい。 - ④運動の30分前にカフェインをとる
運動をすると、脂肪分解酵素であるリパーゼが分泌され、脂肪の分解を促す。コーヒーなどに含まれるカフェイン(*)には、リパーゼを活性化する働きがあるため、運動する30分前にとると効果的。運動は、食後数時間経った空腹時に行い、運動後、30分から2時間は食事を控えると、より効率よく脂肪を燃やすことができる。筋肉量をアップするには、運動後30分以内にアミノ酸やプロテインを飲むとよい。
*カフェインが苦手な場合は、アルギニンやリジンという成分を含む栄養剤などでも、同様の効果が期待できる。 - ⑤難消化性デキストリン(トクホ)を活用する
難消化性デキストリンという成分には、食後の血糖値の急激な上昇を抑えたり、食事に含まれる脂肪の吸収をおだやかにする効果がある。難消化性デキストリンを含むトクホ(特定保健用食品)の飲み物を活用すれば、手軽にコントロールできる。
いつでもどこでもできる! ベリササイズに挑戦
2つめのポイントは、運動です。その前に、まず日常生活で意識していただきたいのは、正しい座り方です。椅子に座るときは、お尻のお肉を後ろに寄せて、坐骨を椅子の座面に立て、その真上に骨盤をのせるようにして座ります。これが正しい座り方です。この座り方を意識するだけでも、首や肩の凝り、腰痛などがかなり改善されると思います。
次にご紹介するのが、今日のメインテーマである「ベリササイズ」です。短時間で手軽にできるものばかりなので、ぜひお仕事の合間などにやってみてください。
●首のストレッチ(首・肩凝りの改善)
- 椅子に座り、片手を頭にあてる。
- 息を吐きながら頭を真横に倒すと同時に、逆側の手の指先を真下に向かって伸ばす。
- そのまま呼吸を5回くり返し、首の伸びをキープしたまま、頭を元に戻す。逆側も同様に行う。
●眼の筋肉の運動(眼球の動きをよくする)
- 顔の正面で片手の親指を立てる。
- 顔を右に向け、顔を動かさずに、目だけで親指を3秒間見る。
- 顔の向きを左、上、下と変えながら、同様に目だけで親指を3秒間見る。
●肋骨の運動(肋骨周辺の筋肉をほぐす)
- 両手で握りこぶしをつくる。
- 第2関節を肋骨にあて、小刻みに動かす。
●指先の運動(末梢血管の血流をよくする)
- 左右の手の指の腹を合わせ、互いに押し合うように力を入れて、10秒間キープする。
- さらに指の付け根まで合わせて押し合い、ゆっくりと手を離す。
●骨盤のストレッチ①(骨盤の可動域を広げる)
- 椅子に座り、脚を肩幅に開く。
- 右手で左の手首を持ち、背中を丸めながら、手首を前に引っ張る。
- 左右の手を入れ替えて、同様に行う。
- 右手で左の手首を持ち、背中を丸めながら、手首を右斜め前に引っ張る。
- 左右の手を入れ替えて、手首を左斜め前に引っ張る。
●骨盤のストレッチ②(骨盤の可動域を広げる)
- 椅子に座り、脚を肩幅に開く。
- 手で椅子の背もたれを持ち、右の腰だけを前にスライドさせる。
- 次に、左の腰だけを前にスライドさせる。左右交互に数回くり返す。
●ツイスト(内臓を正しい位置に戻す)
- 脚を肩幅に開いて立ち、両腕を真横に広げる。
- ウエストをひねるように、左右の腰骨を交互に前後に動かす。
●ゆるゆる体操(体幹を鍛え、左右のバランスを整える)
- 脚を肩幅に開いて立ち、腕は自然に下ろす。
- 顔は正面を向いたまま、右足に重心をのせ、腰を右に出す。
- 左足に重心をのせ、腰を左に出す。左右交互に30秒ほどくり返す。
もう1つ覚えていただきたいのが、正しい歩き方です。正しい歩き方をすることで必要な筋肉が鍛えられ、日常生活での運動能力が高まります。すると、転倒防止になるほか、腰や関節などへの負担が和らぎ、疲れも感じにくくなります。
歩くときにもっとも大事なのは、お尻の筋肉をしっかり使うこと。そのためには、後ろの脚の膝は曲げずに、真っ直ぐにして歩くことを意識してください。地面をけるときに、膝を伸ばしてお尻の筋肉をつき上げるようにして歩くことで、お尻の筋肉全体が鍛えられます。もう一点、注意したいのは、内股にならないこと。内股だと骨盤が開いてしまうので、つま先は若干、外向きになるようにしましょう。
正しい歩き方を習慣にしていると、ヒップの位置も高くなるため、見た目の印象も大きく変わります。ぜひ、ふだんから意識して、実戦してみてください。
3つの快眠テクニックで、質の良い睡眠をとろう
最後に、睡眠についてです。睡眠で大事なポイントとなるのが、成長ホルモンです。成長ホルモンは、寝ているときと運動しているときだけに分泌されるホルモンで、細胞を成長させるほか、骨や筋肉、皮膚、髪の毛などを修復する際に使われます。また、新陳代謝とも深い関わりがあります。よく、眠らないと太るといわれますが、これは、眠らないと成長ホルモンが分泌されず、新陳代謝が悪くなるためで、このことは医学的、科学的にも証明されています。
睡眠中は、深い眠りである「ノンレム睡眠」と浅い眠りである「レム睡眠」を何度かくり返します。その中で、成長ホルモンがもっとも多く分泌されるのは、入眠後、最初の90分間です。この時間帯は「眠りのゴールデンタイム」といわれ、ここでいかに深い眠りにつけるかが大事なのです。そこで、質の良い睡眠をとるためのテクニックを紹介しましょう。
- ①体内時計をリセットする
朝起きたら、30秒から1分ほど太陽の光を浴びる(窓越しでもOK)。すると、体内時計がリセットされ、14~16時間後に眠りを誘うメラトニンというホルモンが分泌され、眠りにつきやすくなる。 - ②日中、脳を使う
脳を程よく疲れさせると、夜、眠くなる物質が出る。新しいことにチャレンジする、仕事帰りに映画を見るなど、いつもとは違う行動をして、脳に刺激を与えるとよい。 - ③ぬるめの湯につかる
人は、身体の深部体温が下がるときに眠くなる。寝る1時間ほど前にぬるめの湯に20分ほどつかると、深部体温がいったん上がる。その後、1時間くらいすると下がってくるため、眠りにつきやすくなる。
人生100年ともいわれる今、少しでも若々しく、元気に、美しく、カッコよく生きていけたら、それに越したことはありません。アンチエイジングとは、若い人のものでもなければ、年をとった人のものでもなく、今の自分をいかにアンチエイジングできるか、ということです。ぜひ、それを心がけながら、生き生きとした日々を過ごしていただけたらと思います。
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