健康教室バックナンバー

平成28年10月26日(水)~27日(木)、TJK箱根の森において、第118回健康教室を開催しました。今回は宿泊型で、1日目はコミュニケーションアドバイザーの牛窪万里子氏を講師にお招きし、『自己実現のためのコミュニケーション法』についてご講演いただきました。2日目は、ヘルスケア・トレーナーの砂田真弓氏に『ストレス対処に役立つリラクゼーション』をテーマにご講演いただいたほか、TJK職員の指導による実技体験を行いました。その様子をレポートします。

講師


講師 牛窪万里子 氏
(株)メリディアンプロモーション 代表取締役、コミュニケーションアドバイザー

●職歴
サントリー(株)食品事業部門に関わる。その後、フリーアナウンサーへ転身。
●主な出演歴
NHK「おはよう日本」「首都圏ネットワーク」「ゆうどきネットワーク」「BSいきいき首都圏」、NHKラジオ第一「ネットワークにっぽん」、CS朝日ニュースター「政治学原論」、テレビ東京「レディス4」、現在はラジオFM OSAKA「アンミカのレディオ・フィーカ」他レギュラー出演中
●コミュニケーション資格
全米NLP協会公認公式認定資格
一般財団法人日本NLP協会公認公式認定資格
コミュニケーション検定上級(コミュニケーション能力認定委員会)
●著書
『見るだけ30分!! あなたに合った「聞く」「話す」が自然にできる』
『初対面の相手もおもわず本音をもらすアナウンサーの質問レシピ』
新刊『仕事ができる人は「声」が違う!』

まずは相手の価値観に合わせることが大切

たとえば、もともと体が丈夫な方と、子どものころから病弱だった方とでは、健康に対する価値観には大きな違いがあるように、その方の経験値などによっても物事の価値観というのは大きく変わってきます。ですから、自分が思っていることを相手に届けるためには、まずは相手の価値観を受け入れて、その方の価値観に合わせた提案をすることが大切です。
 コミュニケーションの成果というのは、何を相手に伝えたかよりも、相手に何が伝わったか、ということです。それを踏まえ、「モチベーションアップに繋がるコミュニケーション法」として、5つのポイントについてお話していきます。

①自分との向き合い方が影響する

何か否定的な出来事が起こった場合でも、捉え方によっては肯定的に変えることができます。たとえば、「家が火事で全焼してしまった」という人に対しては、「でも、ご自身やご家族が無事で良かったですね」という言葉をかけてあげる。このように、何か悪いことが起こったとしても、それを悪いことだと決めつけないで、フレームを変えて肯定的に捉える、という作業を日ごろから習慣にするとよいと思います。
同じように、自分自身への問いかけを変えてみることも大切です。ネガティブになりがちな思考回路をポジティブに変えるには、“脳は空白を嫌う”という特性を利用します。たとえば、道で顔見知りの人に会ったとき、その場では名前を度忘れしていても、ふとした瞬間に思い出すことがあります。これがまさに、空白を嫌うという脳の特性によるもので、自分に対して一度投げかけた質問に対して、脳はその答えが出るまで検索し続けるのです。
 これを活用したのが、世界ナンバー1のカリスマコーチといわれるアンソニーロビンズが提唱している「モーニングクエスチョン」です。朝起きた直後は、脳の働きがとても活発なので、その瞬間に何か質問をすると、脳はその答えを一日中検索し続けます。そこで、朝一番にポジティブなワードを投げかけるのです。たとえば、次のようなものです。
① ○○を実現するためには、今日何をすべきか
② 今、自分は何に感謝しているのだろう
③ 自分で誇りに思うことは何だろう
 こうした質問をすることによって、思考や意識が変わり、いい情報が自然と目に飛び込んでくるようになります。このような習慣をつけると、思考回路も訓練されてポジティブになってきます。すると、人とコミュニケーションをとる際にも、たとえ相手がネガティブな話をしても、相手をポジティブに促すことができるようになります。

②五感に表れるコミュニケーションの違い

人が情報を受け取るときには、「見る」「聴く」「感じる」という感覚が働きます。この視覚、聴覚、触覚のうち、どれが最初に動くかというのは人によって違い、これを「優位感覚」といいます。例えば、商品を選ぶ際に、色や形、デザインを重視するのか、商品の情報(製造元、原材料、賞味期限、体験者の声などの情報)を重視するか、実際に商品を味わったり、触れたりした感触を重視するかという点の違いです。
優位感覚というのは言葉遣いにも表れることがあるので、会話の中で相手がどんな言葉をよく使うかを注視すると、その方の優位感覚がわかる場合があります。「見える・明るい・イメージ」などは視覚的な言葉、「聞こえる・リズム・耳ざわり」などは聴覚的な言葉、「感じる・おいしい話・感触」などは触覚的な言葉になります。相手から感覚的な言葉が出てきたら、それを察知して、同じ感覚の言葉で返すようにしてみてください。そうすることによって、相手との信頼関係が築きやすくなります。

③信頼関係を築くためのステップ

相手の本音を聞き出すためには、信頼関係が不可欠ですが、信頼関係というのはいきなり築けるものではありません。まずは、相手に合わせ、それによって安心感を与え、そこからこちらのペースに導く、というステップを踏むことが必要です。
 では、具体的に何をしたらよいかというと、まずは「傾聴」です。「聴」という漢字を見てもわかるとおり、目と心でも受け止める必要があるので、相手の話を真摯に聴くという心構えが大事になります。そのためにはまず、話し方のテンポを相手に合わせます。そうすることで、相手に安心感を与えることができます。
次に、相手の感情に寄り添う言葉をかけます。いわゆる、「あいづち」です。とくに意識したいのは、褒める、ねぎらう、認める、励ます、という4つのキーワードです。これらは、相手の気持ちを非常に満足させ、自己重要感を満たすものです。
自己重要感とは、自分の価値を確かめたい、という欲求で、この自己重要感なしには人は生きていけないともいわれています。この自己重要感を満足させる、褒める、ねぎらう、認める、励ます、という言葉には、次のようなものがあります。

「素晴らしいですね」「そのご意見は良いですね」
「そんなときもありますよね。大丈夫です!」
「あなたが頼りです」
「あなたがいてくれて本当に良かった」
「あなたのこと、○○さんが褒めていましたよ」
「あなたにしか頼めないのです」

これらの言葉は、たとえお世辞であっても非常に響く言葉です。でも、ただ思っているだけでは相手に伝わらないので、きちんと言葉にして伝えることが大事です。

では、自分とは反対の立場をとる人に対応するときにはどうしたらよいのでしょうか。そんなときは、反対意見であっても、いったんは受け入れる、認める、ということが大事です。「なるほど、○△□というご意見もあるのですね」と、相手の言った意見をリピートするのです。それだけで相手は、「自分の言った言葉をちゃんと受け止めてくれた」と、少し満足します。このワンクッションを入れるか入れないかによって、次の展開が大きく変わってきます。
 そこでいきなり、「でも」「そうではなくて」と否定的な言葉を言うと、その方の自己重要感を頭ごなしにけなしてしまうことになるので、その後何を言っても修復ができなくなってしまいます。なので、絶対に否定する言葉は使わない、というのが原則です。
 また、相手の価値基準を知ることも大切です。相手の意見は何を重視しているのかを聞き出してみると、今まで知らなかった新鮮な考え方だったり、発想が展開する場合もあったりするので、非常に意味があります。

④相手の価値基準を導き出す質問法

相手の価値基準を導き出すには、質問のしかたにもコツがあります。その一つが、「○○で大事なことはなんですか?」という聞き方です。たとえば、「健康になるためにはどんなことが大事だと思いますか?」といった具合です。それ以外に、以下のような質問があります。

● どうなると満足しますか?
● そこに、なくてはならないものは何ですか?
● どうなりたいでしょうか?
● 現在の課題・問題は何ですか?
● 何を避けたいですか?
(出典:NLP-JAPAN ラーニング・センター)

これらの質問をしたとき、相手が強調したり、くり返したりする言葉やフレーズに注目します。そして、相手から出てきたキーワードを「油田堀」していくのです。つまり、テーマを絞り込んで、深く追求していくというやり方です。相手から出てきた言葉をオウム返ししながら、「なぜ?」と質問を問い返していくと、最終的にはその人の本質が見えてきます。
質問の流れの作り方としては、相手の話から次の質問を考える、というのが原則です。たとえば、「どのスポーツがお好きですか?」と聞いて、「野球が好きです。特に最近はメジャーリーグに興味があります」と答えたとします。そこで、“メジャーリーグ”というキーワードに着目して、「では、メジャーリーグでの○○選手の活躍をどう思いますか?」と聞き返すのです。このように、相手から出てきたキーワードで次の質問を考えるようにすると、相手にとっては非常に自然な流れとなり、途切れなく会話を続けることができます。

⑤双方の理解に繋がる言葉の捉え方

ここで、牛窪さんの提案により、参加者全員でゲームを行いました。

<言葉のイメージの違いを知る連想ゲーム>
ゲームのやり方
1.90秒の間に、「人生」という言葉からイメージできる単語をできる限り書き出す。
2.書き出した言葉を隣の人と見せ合い、一字一句同じ単語がいくつあるか確認する。

このゲームをやってみて、「人生」という言葉一つとっても、これだけ人によって捉え方が違うということを実感していただけたと思います。
大事なのは、言葉の中にある情報を探ること。実は、人が発する言葉というのは、一部の情報にしか過ぎず、ほとんどの内容は省略化されているのです。そのため、①欠けた情報を探り出す、②言葉の意味を明確にする、③制限しているもの(思い込み等)を発見する、④選択の可能性を広げる、という意味で、質問することがとても大事なのです。
 たとえば、Aさんが「もっと営業力をつけたいんです」と言っているのに対して、Bさんが「では苦手はところはどんなところですか」と質問したとします。これは、Aさんにとっては非常に唐突な質問です。Bさんの頭の中では、
「もっと営業力をつけたい」
⇒「Aさんは営業力が足りないんだろうな」
⇒「きっと苦手なことがあるからだ」
と、どんどん妄想が走ってしまい、その思い込みによって相手の話を勘違いしているのです。では、この場合、どのような質問をしたらよいかというと、
「では、あなたの考える営業力とは?」
と問い返すのが正解です。
油田堀の中で出てきたように、相手のキーワードをくり返して、そこから次の質問を考えるというやり方です。この場合、「営業力」がキーワードになりますが、営業力に対する概念は人それぞれ違うので、Aさんはどういう考え方なのかを探る必要があるのです。
良い情報交換をするためのポイントをまとめると、以下のようになります。

① お互いの共通点を見つけると距離が近くなる
② 相手の要望を傾聴する
③ 相手に共感をもつこと
④ 自分が提供できることは何かを伝える
⑤ 別れ際には感謝の言葉

では、相手のモチベーションを高めるためには、どんな言葉をかけたらよいでしょうか。実は、人間というのは、目的志向型と問題回避型という2つのタイプに分けることができ、どちらのタイプかによって、かける言葉が変わってきます。
目的志向型の人は、目標を達成しようとするときにやる気が高まります。そのような人には「到達する」「獲得する」「所有する」「手に入れる」という言葉が非常に響きます。一方、問題回避型の人は、問題を避けられるときにやる気が高まります。そのため、「避ける」「~しないようにする」「~しなくていい」という言葉を使うのが効果的です。
 たとえば、「健康を手に入れるためにがんばりましょう」というのは、目的志向型の人には響きますが、問題回避型の人には響きません。問題回避型の人に対しては「こういう病気を防ぐためにこうしていきましょう」という言い方のほうがよいのです。

最後に、参加者全員で「パズルゲーム」を行いました。二人一組になり、一人が言葉だけで誘導し、相手に自分と同じ形のパズルを作ってもらう、というゲームです。制限時間を終えて答え合わせをしてみると、微妙に位置がずれていたり、あるいはまったく違う形になってしまったりと、言葉だけで伝えるのがいかに難しいかを実感できるゲームでした。
 このように、参加型のゲームも交えながら、コミュニケーションに役立つさまざまなノウハウを教えていただきました。

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