平成24年10月18日(木)~19日(金)、直営保養所「TJK箱根の森」において、第106回健康教室を開催しました。今回は宿泊型健康教室で、1日目は第一部としてフィットネスアドバイザーの小川りょう氏を講師にお招きし、近年話題となっているメタボリックシンドローム「内臓脂肪症候群」とロコモティブシンドローム「運動器症候群」について、簡単なストレッチなどを交えて講演をしていただきました。2日目は第二部として、TJK保健師および管理栄養士による講義が行われました。その様子をレポートします。
第二部
「社員の健康管理」
●講師 TJK東中野保健センター 保健師 安藤敏子
朝食の欠食状況(厚生労働省『平成20年 国民健康・栄養調査結果の概要』より)をみてみると、若い世代ほど欠食率が高く、20~30代では2~3割の人が朝食をとっていない傾向がみられます。
朝食を抜いて、1日の総摂取カロリーを少なくしたほうが、体重が落ちるのではないかという意見もあります。しかし、朝食を抜いて、昼から食べ始めると、同じカロリー・内容の食事をとっても、血糖値が上がりやすいという報告もあります。なので、1日の総摂取カロリーがオーバーしない範囲で、できればきちんと3食をとってほしいと思います。
1日の摂取カロリーの目安は、身長や年齢、性別、身体活動レベルなどによって変わってきます。下の計算式をもとに、ご自身の1日の摂取カロリーを計算してみてください。
一般的に、座位中心の生活を送っている人であれば、1日の摂取カロリーは1800~2000kcal程度なので、ここでは1800kcalの場合を想定してお話を進めていきます。
1日1800kcalということは、1食あたりの目安は600kcalということになります。
パンは選ぶものによってカロリーにかなりの差が
仕事がある日の朝食について調べた調査結果によると、朝食をとる人のうち、自宅でとるという人は約4割で、5割以上の人が通勤途中や会社に着いてからなど、自宅外で朝食をとっていることがわかりました。自宅外での朝食では、パンやおにぎり、サンドイッチなど、手軽にコンビニで買えるものを食べている人が多くみられました。
ここで、何を選ぶかというのが問題になってきます。パンの中でも、菓子パンやアップルパイなどは約500kcalあって、これは小さなお弁当1個分にも相当します。一方、ハムとチーズをはさんだものやベーグルなどは200kcal代なので、その差は250kcalにもなります。
1食あたりの目安は600kcalで、それより少ないからいいのでは?と思われるかもしれませんが、炭水化物だけで1食のカロリーのほとんどを占めてしまうのは、バランスが悪いのです。朝食にパンを食べるときは、200kcal代のものを選ぶようにしたいものです。
同じパンのなかでも、サンドイッチは野菜やハム、チーズなども入っているので、バランスがよいように思いがちです。でも、ここに大きな落とし穴があります。
市販されているサンドイッチというのは、時間が経っても野菜の水分がパンに染み込まないよう、バターなどの油脂類でパンをコーティングしています。そのため、見た目よりも脂質のエネルギー比が高いのです。野菜をとるなら、パンとは別に、カップや袋に入った野菜にノンオイルドレッシングをかけて食べた方が、脂質がグンと抑えられます。
ファストフードのメニューも、200kcal代のものから700kcal近いものまであり、選ぶものによって大きな差があります。できるだけカロリーの低いものを選び、サラダもプラスして、バランスよく食べるのが理想です。
手軽に食べられる朝食でおすすめなのが、おにぎり類です。なかには、肉類やマヨネーズなどを使ったものもありますが、カロリーの高いものでも300kcal弱と、パンのなかでカロリーが低めのものとほぼ同じくらいです。なので、おにぎり類を選ぶときは、それほど中身を気にしなくても問題ありません。
コンビニで買うときは、カロリーを必ずチェックする癖をつけて、さらに主食、たんぱく質、野菜を組み合わせるようにするとバランスのよい食事になります。
特に、女性の場合は年齢を重ねるとともに、骨粗しょう症の心配が出てきます。骨密度は20歳をピークに、その後年々落ちていき、50代以降になると骨粗しょう症のリスクが高くなります。ですから、若いうちから積極的にカルシウムをとることが大切です。ヨーグルトや牛乳を、1日に約180gとる習慣をつけていただきたいと思います。
また、男性の場合は血圧の高い方が多くみられます。血圧を下げるには、塩分を控えることも大切ですが、ヨーグルトのようにカルシウム、マグネシウムが入っているものも、血圧を下げる作用があります。カルシウムはイライラを防止したり、精神を安定させたりする作用もあるので、男性にも積極的にとっていただきたいと思います。
朝食では、200kcal程度の主食に野菜(サラダや野菜ジュース)を組み合わせ、さらに手軽にとれる良質なたんぱく源としてヨーグルトをプラスし、トータルで600kcal以内にするのが理想です。
飲み物も糖分や脂質のとりすぎに注意
仕事の合間に飲む飲み物も、日々の積み重ねを考えると、きちんと選ぶことが大切です。コーヒーや紅茶は、ブラックやストレートなら問題ないですが、カフェオレやミルクティーなどはかなりの脂質と糖分が入っています。甘いコーヒーや紅茶を飲む習慣のある方は、2回に1回でもよいのでブラックコーヒーや無糖の紅茶を選ぶようにしてください。
社内に自動販売機を置いている場合は、そうしたものを選べる環境に整えておくことも大切です。お茶やお水、無糖や微糖の飲み物を豊富に揃えておくようにしていただきたいと思います。
お弁当は上手に残す工夫を
次に、昼食についてです。一般的に、会社で用意される仕出しのお弁当は、ご飯の量も多めで、800kcalを超えるものが多く見られます。ご飯を少なめにしたり、小さめのお弁当を頼んだりできるならまだいいのですが、そうでない場合は、食べ方を工夫する必要があります。
付け合わせとしてよく添えられているポテトサラダやスパゲティサラダは、これもれっきとした炭水化物です。こうしたものは最初からふたのほうによけておいて、その代わり、メインのおかずはしっかり食べる、というふうにするだけでも、カロリーをかなりカットできます。近ごろはコンビニでも、ヘルシー弁当と銘打っているものもあるので、そういうものを選ぶのもよいでしょう。
また、間食はしないに越したことはないのですが、どうしても何か口にしたいときは、ガムや低カロリーの飴などがおすすめです。ノンシュガーの飴と砂糖を使った飴を比較すると、1袋で200kcalもの違いがあります。
アルコール類は、1日の適量はビールなら500ml、日本酒180ml、焼酎90ml、ウイスキー60mlです。アルコールは1gで7kcal。糖質は1g4kcalなので、倍近くのカロリーがあります。種類によって適量にこれだけ差があるのは、アルコール濃度の違いによるものです。実際のカロリーをみてみると、ビールは200mlで80kcalなのに対し、ウイスキーは30mlで80kcalとなります。
ビールはプリン体を多く含むので、尿酸値の高い方はプリン体カットのビールや、焼酎、ウイスキーなど選んだ方がよいでしょう。ただし、焼酎やウイスキーはプリン体は含んでいませんが、飲みすぎると尿酸の排泄を阻害する働きがあります。いずれにしろ、適量を守ることが大切です。
お酒が好きな方は、急に量を減らすのは難しいかもしれません。その場合、宴席では飲むとしても、家では飲まない習慣をつくると、自然と弱くなります。すると、宴席でも早めに酔うことができ、無理なく適量に近づけることができます。
酔っぱらって惰性で飲むことがないよう、お酒をまとめ買いするのはやめて、おいしく飲める分だけを買うようにしてください。
おつまみは賢く選んでカロリーダウン
宴席では、お酒を楽しく飲む代わりに、おつまみの選び方に気をつけてください。揚げ物や脂分の多い肉類など高カロリーのものは避け、できるだけカロリーの低いものや野菜類など、安心して食べられるものを中心に選ぶようにしましょう。
ただし、イメージだけで選んでしまうと、意外に高カロリーのものもあります。たとえば、揚げ出し豆腐などは、豆腐だからヘルシーだと思いがちですが、油でコーティングされているので、思ったよりもカロリーが高めです。また、同じ刺身でも、マグロの大トロ一切れは、アジ1匹分に相当するほどのカロリーがあります。メニューにカロリー表示がある場合は、必ずチェックする習慣をつけるようにしましょう。
締めにどうしても何か食べたいときは、ラーメンや焼きそばなどではなく、おにぎりなどがおすすめです。それも、できれば最初に食べた方がよいのです。おにぎりを最初に食べると、肝臓や胃への負担も軽くなります。その後、アルコールという水分が入ることで、腹持ちもよくなり、おかずの食べすぎも防げます。
三大生活習慣病である糖尿病、高血圧、脂質異常と診断された人のうち、それぞれ治療を受けた人と受けていない人の割合を調べた調査結果があります。これによると、糖尿病では半数の人が治療をしているのに対し、高血圧では7割以上、脂質異常にいたっては97%もの人が治療を受けていないことがわかりました。また、糖尿病においても、ほとんどの人が治療を継続していませんでした。その理由として、「時間をとるのが難しい、仕事を休めない」というのが断トツで多く、次いで、「治療をやめても変わらない」というのがありました。
生活習慣病は、そのほとんどが自覚症状がありません。風邪などの自覚症状のある病気と生活習慣病とでは、病院へ行く目的がそもそも違うのです。生活習慣病の場合は、病院で検査を受け、それによって得られたデータによって、今自分がやっている食事療法や運動療法が正しいのかどうかを確認しているんだ、という認識をきちんと持っていただきたいと思います。
20代、30代の暴飲暴食が、すぐに疾患につながるわけではありません。でも、それは確実に蓄積されていくので、若いうちから気をつけておかないと、40代になったときにつけを払うことになってしまいます。
肥満やメタボリックシンドロームは、年齢を重ねるほど増加する傾向にあります。病気になってからいきなり生活習慣を変えるのは大変なので、ぜひ20代、30代のうちから食生活や運動習慣を見直し、生活習慣病の予防に努めていただきたいと思います。
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