平成22年11月10日(水)~11日(木)、直営保養所「TJK箱根の森」において、第100回健康教室を開催しました。今回は宿泊型健康教室で、1日目には第一部としてTJK健康運動指導士による講義と体験実技、2日目には第二部としてTJK保健師および管理栄養士による講義と、健康運動指導士による体験実技が行われました。その様子をレポートします。

1日目

第一部 効果的な運動の方法

●講師 笠原 千秋(TJK健康運動指導士)

体験実技に先立ち、厚生労働省から出されている『健康づくりのための運動指針2006』(PDF)に基づいて、身体活動の目標などについての講義が行われました。

「身体活動」とは、いわゆる運動に限らず、通勤で歩くとか、階段の上り下りといった日常的な生活活動も含みます。
身体活動量はエクササイズという単位で示されますが、1週間に23エクササイズというのが目標基準として定められています。運動や生活活動の各種目の強度をメッツという単位で表し、これに実際に行った時間をかけたものが身体活動量(エクササイズ)になります。計算方法は次のとおりです。

身体活動の強さ「メッツ」 × 時間「時間」 = 身体活動量「エクササイズ」
※分は時間に換算 例)30分→0.5時間

生活活動だけでなく、運動も取り入れることが理想で、23エクササイズのうち4エクササイズ分は運動によってクリアすることが望ましいとされています。ただし、これはあくまでも一般的な食事量を前提とした基準なので、普通より食べる量が多いという方は、必要なエクササイズも多くなります。また、内臓脂肪がついてしまっている、脂肪をもっと燃焼させたいという場合は、10エクササイズ分の運動が必要になります。

みなさんの生活習慣を伺ってみると、12~15エクササイズという方が非常に多いです。そこで、無理なく目標基準をクリアするためにはどのような工夫をしたらよいかをご紹介します。

例)1日の歩く時間が平均30分間の方が23エクササイズを目指すには…
<平日>
・昼休みに少し歩く、階段をできるだけ使うなどして、通勤以外で歩く量を1日10分程度増やす。
・10分程度の体操を行う。
・残業のない日は帰りに一駅分歩く。

<休日>
・30分間ウォーキングする。
・床ふきや風呂掃除なども含め、50分くらいかけて掃除をする。
・簡単な体操を行う。

これらを実践すると、1週間で23.7エクササイズとなり、そのうち運動でも4エクササイズとれます。
 と、理論的にいってしまうと簡単ですが、実際に行うとなると難しい部分もあるとは思います。しかし、生活を振り返っていただいて、活動量が少ないと思われた方は、まずは生活の中での活動量を増やすことを意識してみてください。そして、少しでも余裕があれば、ぜひ運動する時間も取り入れていただきたいと思います。

だいたいの目安としては、1日1時間の活動量があれば、1週間で23エクササイズをクリアできます。普通歩きで1時間ほどです。それも、継続して歩く必要はありません。通勤で、行きと帰りにそれぞれ片道15分ずつ歩いたとしたら、それで30分という計算になります。そう考えると、ちょっと工夫すれば1日1時間の活動量をクリアするのはそれほど難しくはないのではないかと思います。
「運動強度(メッツ)表」を基に、実際、普段の生活でどれくらいのエクササイズになっているのかをぜひ計算してみてください。

講義後には、体験実技として、隣接する「彫刻の森美術館」にてウォーキングが行われました。

受講者には万歩計が配られました。
運動は、十分に体を温めてから行ったほうが脂肪燃焼率が高まるとのことで、ウォーミングアップとして以下のストレッチが行われました。 ストレッチを行うときのポイントとして、
(1)呼吸は止めず、楽な呼吸で行う
(2)無理に伸ばさず、痛気持ちいいと感じる程度のところまで伸ばす
(3)伸ばした状態で10秒以上キープする
とのアドバイスがありました。

(1)足を肩幅に開き、両手を組んで手首を返し、真上に向かって伸び上がる。
(2)(1)の姿勢のまま、上体を片側にひねり、10秒キープする。反対側も同様に。
(3)(1)の姿勢のまま、上体を真横に倒し、10秒キープする。反対側も同様に。
(4)膝を曲げて片脚を持ち上げ、10秒キープする。反対側も同様に。左右で1セットとし、2セット行う。
(5)足をやや大きく開き、上体を前に倒し、10秒キープする。
(6)手を腰にあて、上体を片側にひねり、10秒キープする。反対側も同様に。
(7)腰をゆっくり3回まわす。反対側も同様に。
(8)手を胸の前で組み、そこに膝をつけるように片脚を持ち上げる。10回繰り返し、反対側も同様に行う。
(9)手首、足首をまわす。
(10)両手を組み、大きな8の字を描くように上半身をまわす。

次に、正しい姿勢と、歩くときの注意点についての説明がありました。

●正しい姿勢
・足の指を地面にしっかりつけるように意識し、重心が体の真ん中にくるように立つ。
・耳、肩、腰骨、くるぶしが一直線上にあるようにする。
・上から引っ張られているような感覚で、背筋を伸ばす。
・胸を張りすぎず、お腹を引き締める。
・おへそを正面に向ける。
・肩甲骨を下げる。

●歩くときの注意点
・正しい姿勢を意識する。
・いつもより歩幅を広くする。
・肩の力を抜き、ひじを後ろに引くような感覚で腕を振る。
・おへそが中心にあることを意識する。

万歩計をリセットし、TJK箱根の森を出て、「彫刻の森美術館」へ移動。到着したところで再び軽くウォーミングアップし、ウォーキングを開始しました。
最初の目的地は、15分ほど歩いたところにある足湯スペース。ここで、足湯に浸かりながらできる簡単な体操が指導されました。

(1)足首まわし
血行やリンパの流れがよくなる。脚がむくみやすい人は、日中からデスクの下で、ときどき足首をまわしておくと、むくみ予防になる。

(2)足指グーパー
足の指でグーパーするように、閉じたり開いたりする。足の指を使っていないと、偏平足になりやすくなる。足底筋は歩くときにバネ、クッションの役割をするため、そこが弱ると足が疲れたり、ケガの原因になるので、ふだんから鍛えておくことが大切。

この2つの体操は、お風呂に入ったときにもぜひ行ってみてください。
寒いとき、足首や足の指を動かすだけでも体は温まってきます。体温が下がると免疫力が下がるといわれていて、特に冬はかぜをひきやすくなります。日ごろから体温を下げない工夫をすることが大切です。朝、温かい飲み物を飲んだり、お家の中でもちょっとした体操をするだけでも、体温を上昇させることができます。

足湯に10分ほど浸かったあと、ウォーキングを再開。広々とした施設内に点在する個性豊かな作品や、紅葉が始まったばかりの山々を眺めながら、トータルで1時間ほど歩きました。この日は、やや風は冷たいものの、好天にも恵まれ、受講者たちは談笑しながらウォーキングを楽しんでいました。

TJK箱根の森に戻ってからは、万歩計で1時間の歩数が何歩くらいになっているかの確認をしました。その後、クールダウンとして、室内で以下のストレッチが行われました。

(1)足を肩幅に開き、両手を組んで手首を返し、真上に向かって伸び上がる。
(2)(1)の姿勢のまま、上体を真横に倒す。反対側も同様に。
(3)足をやや大きく開き、上体を前に倒す。
(4)(3)の姿勢のまま、上体を横に向ける。反対側も同様に。
(5)片方の腕を前に伸ばし、逆側の腕をひじの外側にあて、自分の方に引き寄せる。反対側も同様に。
(6)後ろで手を組み、上体を真っ直ぐキープしたまま、腕だけを持ち上げる。
(7)手を腰にあて、腰を大きくゆっくり回す。反対側も同様に。
(8)足を前後に開き、前の足に体重を移動させ、後ろの脚のふくらはぎを伸ばす。反対側も同様に。

以上をもって、第一部は終了しました。

2日目

第二部「社員を健康に導く生活改善について」

第二部は、「健康経営、メタボリックシンドロームについて」、「食事について」、「運動について」の3つのテーマに分けて、講義が行われました。

■社員の健康状態と会社の経営は深く関係している
 「健康経営」とは、経営的な観点から考えて、社員の健康管理を行うということです。社員の健康状態がよければ、その社員がしっかり能力を発揮することができるので、会社の経営もうまく回るというわけです。社員の健康は会社の健康。健康管理委員のみなさんには、社員の健康管理を率先して行っていただきたいと思います。

■健診の結果、異常が指摘され紹介状が出た場合、早めに医療機関を受診しましょう
2010年4月~7月に直営健診センターを受診して紹介状が出された方を対象とした調査によると、実際に病院を受診した方の割合は54%となっています。つまり、紹介状が出ても病院を受診していない方が半数近くいらっしゃるということです。
無症状だからといって放置しておくと、症状が進行してしまったり、将来大きな病気を引き起こすリスクが高くなったりしますので、健診の結果、何かしら異常が指摘された場合には、必ず医療機関を受診していただきたいと思います。

■生活習慣の改善を図り、生活習慣病を予防しましょう
次に、医療費の面から見てみましょう。平成17年度の医療費の内訳を見てみると、国民医療費33.1兆円のうち、生活習慣病によるものが10.7兆円。つまり、医療費の約3割を生活習慣病が占めているのです。死因別の死亡割合を見てみますと、約6割を生活習慣病が占めています。

国民医療費(平成17年度)


(注)国民医療費(平成17年度)、わが国の慢性透析療法の現況(2005年12月31日)等により作成

その名のとおり、生活習慣病とは生活の乱れによっておこる病気の総称です。なかでも、罹患率の高い高血圧、糖尿病、脂質異常症は「生活習慣病の三大疾患」と呼ばれています。
生活習慣病は、生活の乱れを正すことで予防が期待できる病気です。生活の改善を図って生活習慣病を予防すれば、医療費を抑えることができ、将来的にはみなさんにご負担いただいている健康保険料を減らすことにもつながるかもしれません。

■生活習慣病はメタボとも深い関係が
 メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積に加え、高血圧や脂質異常症、糖尿病、もしくはそれらの前段階を重複してもっている状態をいいます。
内臓脂肪というのは、ただの脂肪ではなく、そこからいろいろな物質が分泌されています。内臓脂肪から分泌される物質は、善玉と悪玉に大きく分けられます。善玉の一種であるアディポネクチンという物質は、動脈硬化を抑えたり、インスリンの効きを良くしたりする働きがあります。一方、悪玉の物質は、中性脂肪を増やす、インスリンの効きを悪くする、血圧を上げるといった作用があります。
内臓脂肪の量が正常なときは、善玉と悪玉がバランスよく出されていますが、内臓脂肪が増えると善玉のものは減り、逆に悪玉のものが増えてしまいます。その結果、脂質異常や血圧・血糖値の上昇などを引き起こすのです。

下表は、メタボリックシンドロームになりやすい生活習慣を送っていないかをチェックするものです。10項目ある設問に当てはまる項目が多いほど、内臓脂肪をためこみやすい生活を送っているということになります。

(1)満足するまで食べる  
(2)残り物をつい食べてしまう  
(3)野菜が不足している  
(4)甘い飲み物をよく飲む  
(5)炭水化物の重ね食いが多い  
(6)間食をよくする  
(7)夕食の時間が遅くて量が多い  
(8)アルコールの飲み過ぎ、休肝日がない  
(9)運動不足である  
(10)たばこを吸っている  
合計  

■内臓脂肪の蓄積は、動脈硬化も進行させる
中性脂肪や血糖値が高いドロドロの血液が流れていたり、血圧が高かったりすると、血管の内側の壁に負担がかかり、傷つきやすくなってしまいます。その傷ついた壁にコレステロールがたまると、血管の中が狭くなり、血液の通りが悪くなります。この状態を動脈硬化と呼んでいます。動脈硬化になると、心筋梗塞、脳卒中といった血管の大きな病気を引き起こすリスクが高くなるといわれています。

このように、内臓脂肪が増えると脂質異常、血圧・血糖値の上昇がおこり、その結果、動脈硬化を進行させることになるのです。

心疾患発症の危険度


労働省作業関連疾患総合対策研究班の調査より Nakamura et al. jpn Cric J, 65: 11, 2001

上記は、心疾患発症の危険度を表すグラフです。肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常の4つを危険因子とした場合、これらの危険因子がまったくない方に比べ、危険因子を3~4個持っている方の心疾患発症の危険度は、約36倍も高くなるということです。

■内臓脂肪を減らすには、運動と食事をバランスよく
内臓脂肪を減らすというと、食事制限だけをイメージする方が多いと思います。しかし、食事には食事のメリットが、運動には運動のメリットがあるので、両方をバランスよく行うことが大切です。

<運動のメリット>
(1)カロリーを消費する。
(2)脂肪をエネルギーとして燃焼する(特に内臓脂肪は減りやすい)。
(3)基礎代謝の低下を抑える(脂肪を燃焼しやすく太りにくい体になれる)。
(4)インスリンの働きを良くする(高血糖、高血圧、脂質異常が改善する)。

<食事のメリット>
(1)栄養バランスが良い食事で、生活習慣病を予防できる。
(2)カロリーをコントロールしやすい。

例)ビール3杯=1時間20分のランニング※=600kcal
※体重70kgの方の場合

減量のペースは、1ヵ月に1kgくらい減らすのが理想といわれています。
脂肪を1kg減らすためには、7,200kcal必要です。それを30日で減らすためには、一日あたり240kcal分を捻出しなければならないということです。
240kcalを運動だけで消費しようとすると、毎日3時間弱のウォーキングをしなければなりません。それはなかなか大変なので、たとえば、運動で100kcal、食事で140kcalというふうに分けて設定してみます。今までの生活よりも100kcal分消費量を増やし、加えて、食事は140kcal分食べる量を減らす。それを毎日続けると、30日で1kg減るという計算です。

(例)※体重70kgの場合
運動100kcal=ウォーキング25分 or ランニング13分
  +
食事140kcal=ご飯軽く1杯 or 缶ビール350ml or 焼き鳥(皮)1本 or 餃子3個

食事の改善というと、まっさきにご飯の量を減らす方がいらっしゃいます。ご飯が大好きで、ついおかわりをしてしまう、という方であれば、ご飯の量を減らすのは適しています。しかし、元々ご飯を食べる量が少ない方がさらに減らしてしまうと、必要な栄養素がとれなくなってしまいます。
自分の食習慣を見直して、「間食が多い」「アルコールの飲みすぎ」など余分にとりすぎているカロリーを減らす、というのが食事改善のポイントです。

■特定保健指導について
 この内臓脂肪に着目しているのが、特定健診と特定保健指導です。対象となる40~74歳の方は、健診に特定健診の項目が組み込まれています。

特定健診の検査結果(腹囲、BMI、血圧、血糖、脂質、喫煙)に応じて、「積極的支援」、「動機付け支援」、「情報提供」の3つに分類します。積極的支援と動機付け支援に該当した方が、特定保健指導の対象となります。

特定保健指導の流れは以下のとおりです。

(1)保健指導の面接:これまでの生活を振り返ってメタボの原因を探り、生活改善の計画を立てる。

(2)半年間のプログラムを実施:対象者は月1回程度、メールや手紙、電話などで計画の進み具合を報告し、それに対して保健指導スタッフがアドバイス。

(3)6ヵ月後、プログラム終了

プログラムが終了した後も、プログラムでの経験や知識を活かし、自己管理をしながら健康的な生活を送っていただくことが、この特定保健指導の最大の目的です。

特定保健指導実施状況※


※2009年4月~2010年1月に直営健診センターで受診した特定健診受診者を対象

特定保健指導の実施状況をみてみると、保健指導の対象となった方のうち、プログラムを最後まで終了した方は45.9%です。一方、面接自体を受けていない方が26.2%、面接は受けたけれどプログラムへの参加を拒否した方が13.6%、プログラムには参加しても支援中にメールや手紙への回答がない方が14.1%でした。つまり、メタボの可能性がある方の半数以上が、特定保健指導のプログラムを終了していないということです。
健診当日に面接が受けられなかった方には、後日、面接案内をお送りしていますので、面接のご予約をお願いいたします。
特定保健指導を受けていただくことは、医療費削減の第一歩にもなりますので、対象となった方はぜひ、積極的にプログラムに参加していただきたいと思います。

これからお話しする「食習慣7ヶ条」は、誰もが聞いたことのあるものばかりかもしれません。でもこれは、すでにメタボリックシンドロームに該当する方はもちろん、現在はやせている方、あるいは健康そのものという方も含め、すべての方にとって大切なことなので、ぜひ心に留めておいてください。

(1)ゆっくり噛んで食べよう
よく噛むことで唾液が出て、脳に刺激がいき、満腹感を感じます。これが、過食の防止になるだけでなく、インスリンの分泌を正常にする、内臓脂肪をつくらない、肥満を予防するといったことにもつながります。

さらに、自分は今、食事をしている、美味しく食べて幸せな時間を過ごしているんだ、というのをしっかり実感することも、ゆっくり噛んで食べることの大切な目的の一つです。

同じものを食べれば、食べるスピードが早かろうが遅かろうが、摂取カロリーは変わりません。しかし、時間がなくてとにかく早く食べられるものをかき込んだとか、落ち着けない環境のなかで食事をした場合、食べた気がしない、あるいは美味しく感じられなかった、という経験をしたことがあるかと思います。このように、感情と食欲というのは非常に密接な関係にあります。

ゆっくりよく噛んで、美味しく味わいながら、心から満足できる食事をとる──これができているかどうかが、長年の食習慣のなかで過食がおきるかおきないかの境目になるのです。

(2)1日3食しっかり食べよう
朝、昼、夜の1日3食とるというのが食事の基本です。食事の間隔は6~8時間くらいが理想ですが、間隔が短すぎると、体がまだ求めていない状態なのに食事をとることになります。逆に、空腹時間が長すぎると、体は軽い飢餓状態となり、ドカ食いになりやすいのです。遅い時間帯の食事がよくないといわれるのは、そのためです。

先ほども言ったように、感情と食欲は密接に関係しています。残業中などは神経が緊張状態にあるため、食欲は抑えられています。ところが、家に帰って気持ちが開放されたとたん、それまで押さえつけられていた食欲が一気に出てきます。一度暴走してしまった食欲は、理性だけでは止めることが難しく、必要以上に食べてしまうのです。

朝はコーヒーだけ、お昼はデスクでサンドイッチをつまむ程度、なのに太っている、という方は、たいてい遅い時間に食事をとっています。あるいは、お昼は食べる気がしないといいながら、夕方にお菓子を食べたり、お砂糖入りの缶コーヒーを飲んだり、といった具合です。
 これらはいずれも習慣なので、悪い習慣は意識して変えていくしかありません。やせるためにはただ食べなければよいというわけではなく、食べるべきものを食べないと、後々体を壊すし、回りまわってよいことはないのです。

まずは、規則正しい食事回数、そして時間帯を意識するようにしてみてください。

(3)体重を量ろう
体重を量るというのは、自分でできる一番身近な健診項目の一つです。肥満予防のためだけでなく、何かの病気が原因で知らないうちに体重が減っているというケースもあるので、健康のバロメーターとして、できれば毎日、体重を量ることを習慣にしてください。

実際に保健指導をさせていただいたある女性は、体重を量るのを実践したことで、半年間で目標体重以上をクリアすることができました。プログラム終了時、次のような感想を寄せてくださいました。

「保健指導を受けて、体重を強く意識したことで減量ができました」

やせたいという気持ちはあっても、持続的に行動できなかったのは、体重という現実の数字を毎日見ていなかったことが原因の一つだったのでしょう。

まずは、事実を認めて、そこから一歩を踏み出すこと。これが大切です。人間ドックでは空腹時体重を量るのが鉄則ですが、自己管理のための体重測定では、そこまで厳密にする必要はありません。毎日、ほぼ同じ時間帯に、いつもどおりの服装で量る、それで十分です。前日に食べすぎて体重が増えてしまったとき、それを認識して、気をつけよう、調整しようという気持ちになることが大切なのです。
一人暮らしの方などは、家に体重計がないという方も多いので、会社に一台、体重計を備えておいていただくのもよいかと思います。

ここまでは、すべての方に必ず実行していただきたいことです。(4)以降は、すでに体重が増えてしまった方、あるいは体重が増え始めたという方には即実践していただきたいし、そうでない方にも今から知っておいていただきたい内容です。

(4)食事は腹八分
自動車であれば、20リットルのガソリンを入れて2週間もたせる、といったことができます。でも、私たち人間は、今日たくさん食べたからといって、その後の何日かは食事を抜くというわけにはいきません。
食べすぎた分は脂肪となって体に蓄えられます。この脂肪には、ビタミンやミネラルはそれほど含まれていないし、脳みそを働かせるためにはブドウ糖が必要です。このように、体にとって必要な栄養素を補給するためには、新たに食事をとらなければなりません。これが、じわじわと右肩上がりで体重が増えていく原因です。

200kcalを牛脂身に換算すると、たったの28g。でも、毎日200kcal食べすぎていたら、1年で10kgの脂肪になります。この数字はあまりピンとこないかもしれませんが、1日20kcal食べすぎたとすると、1年で1kg増加することになります。去年より微妙に1kg増えている、一昨年より2kg増えてる、という方は少なくないのではないでしょうか。
20kcalというと、飴玉2個、アーモンドチョコ1粒、微糖の缶コーヒー2分の1本がそれぞれ相当します。こんなわずかな量でも、積み重なれば体重の増加につながってしまうのです。

ふだんから腹八分を意識していても、つい食べすぎてしまうことは一年のうちに何回もあります。その分を調整しない限りは、体重は増え続けてしまうということです。日ごろから腹八分を心がけることは、自己管理の第一歩です。

(5)遅い夕食は腹六分
仕事の都合で夕食が遅くなってしまうという方は多いと思いますが、遅い時間に食事をとると、確実に太ります。とはいえ、体に必要な栄養素はきちんととる必要があるので、単に食べなければいいというものではありません。最も手っ取り早い解決法は、夕食を早めの時間にとってしまうということです。

<夜は外食、あるいは市販の弁当を食べるという人は…>
・早めの時間に食べる。
・大盛りにしない。
・帰宅後にも何か食べたい場合は、外食で不足していた野菜や大豆製品などを補給し、合わせて一食と考える。

<夕食は家で食べたいという人は…>
・朝や昼食時に軽食(おにぎり、バナナなど)を買っておき、夕方に食べる。
・帰宅後にきちんと食事をとる(ただし、量に注意し、脂っこいもの、主食は控えめに)。

夜のドカ食いを防ぐためには、夕方に軽食を食べておくのがお勧めです。ただし、何を食べるかも重要です。
 おせんべい2枚とおにぎり1個は、カロリーはほとんど同じです。でも、おせんべいは食事という感覚ではないので、帰宅後の夕食を減らさなきゃという意識はおきづらくなってしまいます。
夕方に軽食を食べる際にもきちんと味わって、これも食事の一部なんだ、帰ってから食べる食事と合わせて一食なんだ、という気持ちで食べることが大切です。
 お昼は多少ボリュームのあるものでもいいので、夜は控えめにする、ということを心がけてください。

(6)カロリーチェックを欠かさない
外食をするとき、あるいはお弁当やお惣菜を買うときは、カロリーチェックすることを習慣にしてください。また、カロリーだけでなく、使っている素材や調理方法、栄養バランスなども選ぶときのポイントになります(下表参照)。

●マカロニサラダ vs ポテトサラダ vs グリーンサラダ

  マカロニサラダ ポテトサラダ グリーンサラダ
カロリー 142kcal 106kcal 17kcal
チェックポイント ●マヨネーズを使っているため、高カロリー
●マカロニは炭水化物なので、糖質中心
●マヨネーズを使っているため、高カロリー
●じゃがいもは食物繊維やビタミンCなどを含む
●野菜だけなので低カロリーだが、マヨネーズをかければ一気にカロリーはアップする
●チーズやベーコンなどが入ったシーザーサラダは高カロリー
●ドレッシングをかけず、味の濃い肉料理などと一緒に食べると、栄養バランスもよくなる

(7)嗜好品はほどほどに
同様に、嗜好品もカロリーチェックすることを習慣にし、内容にも目を向けましょう(下表参照)。

●タルトケーキ vs レアチーズケーキ

  タルトケーキ レアチーズケーキ
カロリー 320kcal 190kcal
チェックポイント 上にのっているナッツや下のタルト生地が高カロリー 生クリームが少なめのため、カロリーはやや低い

体に必要な栄養素をとるという大事な目的がある3食の食事に対し、嗜好品は食べることそのものが大きな楽しみです。大好きなものを、心から美味しいと思って味わって食べる、それが心の満足感にもつながります。そして、とりすぎてしまったカロリーは別の食事で調節する、といった具合に、上手に取り入れることが大切です。

保健指導をしていると生活習慣を見直す障害として、「とにかく時間がない」とおっしゃる方が非常に多いです。でも、それを理由にいい加減な食習慣を続けていては、将来的に病気になるリスクは高くなります。

たとえば、プチトマトやバナナなどを買い置きしておいて、ランチにプラスしたり、夕方の軽食代わりにすれば、手間もお金もかけずにヘルシーな食事になります。そんなちょっとした心がけで、食習慣は改善することができ、それが健康づくりにつながります。
 すでに体重が増えてしまっている方はもちろん、そうでない方も、正しい知識を心に留めて、今から気をつけていっていただきたいと思います。

今日は、椅子に座ったまま、あるいは会社や自宅などでも手軽にできる体操をご紹介します。種目ごとに、どこを伸ばしているか、どこを鍛えているかというのをしっかり意識して行うことで、わずか30秒でも効果が得られます。

●注意点
・反動はつけず、ゆっくり行う。
・呼吸を止めない。

<ストレッチ体操>
・無理して伸ばさない。
・伸ばしている部位を意識して行う。
・伸ばした状態を10秒以上キープする。

<筋力トレーニング>
・急に力を入れたり抜いたりしない。
・最初は無理のない回数や秒数で行い、慣れてきたら徐々に回数や秒数、セット数を増やす。

●正しい座り方
(1)椅子の中央あたりに、浅めに腰掛ける。
(2)腰骨、肩、耳の位置が真っ直ぐになるようにする。
(3)左右の尾骨に均等に体重をかける。
(4)お腹に軽く力を入れ、背筋を伸ばす。
 この正しい座り方を5分間キープするだけでも、かなりの筋力トレーニングになります。通勤時に立ったり座ったりしているとき、正しい姿勢を意識するだけでも、身体活動量を増やすことができます。

●肩のストレッチ
(1)座ったまま、息を吸いながら肩を持ち上げ、息を吐きながらゆっくり下ろす。
(2)息を吸いながら肩を持ち上げ、肩を後ろに回しながらゆっくり下ろす。2回繰り返す。
(3)息を吸いながら肩を持ち上げ、肩を前に回しながらゆっくり下ろす。2回繰り返す。

●立位のストレッチ
(1)足を肩幅に開き、頭上で両手を組み、手のひらを返して伸び上がる。
(2)そのまま上体を前に倒して、力を抜く。
(3)再び上に伸び上がり、そのまま上体を真横に倒す。反対側も同様に。
(4)(1)の姿勢のまま、上体を片側にひねる。反対側も同様に。

●肩・胸・背中のストレッチ
(1)両手を後ろで組み、左右の肩甲骨を寄せる気持ちで手を下に引っ張る。胸の筋肉も開く気持ちで行う。
(2)両手を肩にあて、腕が床と水平になるまでひじを上げ、左右のひじを閉じる(くっつかなくてもよい)。
(3)ひじの高さを変えずに、左右のひじを後ろに引く。(2)~(3)を2回繰り返す。
(4)手を肩にあてたまま、両ひじをゆっくり大きく回す。ひじができるだけ体から遠い位置を通るように意識する。反対回しも同様に。
(5)首をゆっくり大きく1回転させる。反対回しも同様に。

●背中の筋トレ
(1)前から引っ張られているような感覚で、両腕を前に伸ばして4秒キープする。
(2)左右の肩甲骨を引き寄せるようにして、ひじを後ろに引き、4秒キープする。(1)~(2)を5回繰り返す。

●胸の筋トレ
(1)机を前にして、椅子に座る。
(2)腕と胸の筋力だけを使って、机を上から下に5秒間抑える。

肩こりは、肩甲骨を動かすとかなり解消されます。仕事をしながら手を動かすのが難しければ、肩を動かすだけでも構いません。上下に動かす、前後に動かす、まわす、これだけでも肩甲骨がグイグイと動くのがわかると思います。
肩がこりそうだなと思ったら、できれば30分に一回は肩まわりを大きく動かす時間を作ってください。それだけでも活動量が増えてきます。

また、肩こりの原因といわれるのが、背筋の筋力不足。筋力が低下すると、猫背になることにより首にかかる負担が常に大きくなります。そうなると、首痛や肩こりの原因となったりします。これを防ぐには背中の筋力を鍛えることが大切です。

●腰・股関節・脚のストレッチ
(1)座った状態で脚を組み、組んだ脚のひざを逆側の手で押さえ、もう片方の手は背もたれを持ち、組んだ方の脚側に上体をひねる。反対側も同様に。
(2)両足を大きく開き、手を膝にあて、背筋を伸ばしたまま、あごを突き出すようにして上体を前に倒す。
(3)片足を逆側の膝にのせ、上体を前に倒す。反対側も同様に。
(4)浅めに腰掛けて片脚を前に伸ばし、そのまま上体を前にゆっくりと倒す。反対側も同様に。

●すね・ふくらはぎ・脚の筋トレ
(1)座った状態で、つま先をゆっくりと上げ下げする。できるだけ高く上げる。反対側も同様に。
(2)かかとをゆっくりと上げ下げする。足をつらないように、様子をみながら行う。反対側も同様に。
(3)片脚を床と水平に持ち上げ、かかとを押し出すように伸ばす。
(4)左右の膝を押し合うようにして腿の内側に力を入れ、5秒間キープする。

刺激の加わっていないところに脂肪はつきやすいといわれています。ふだん動かす機会の少ない「お腹」はそのひとつです。ひねるという動作は、ふだんの生活の中で少ない動きですので、意識して取り入れてください。
 また、左右でやりづらい方がある場合は、そちらの回数を多めにしたり、時間を長くしたりして、できるだけ左右差をとるようにしてください。

昨日のウォーキングにより「疲れたな」と感じる部分があれば、そこの筋力が低下しているおそれがあるので、その部分を意識して鍛えるようにしてください。今日ご紹介した体操は、ぜひ仕事の合間にも積極的に行うようにしてみてください。

運動指導の最後に腹式呼吸を行いました。腹式呼吸には、イライラをおさえて気持ちを落ち着かせる効果があります。お腹の筋肉が鍛えられ、ウエストの引き締め効果もあるので、運動する時間がない方も、ぜひ取り入れるようアドバイスがありました。

●腹式呼吸
(1)正しい姿勢で座る。
(2)鼻から息を吸って、お腹を膨らませる。
(3)口から息を吐きながら、お腹と背中がくっつくぐらいの気持ちでお腹をへこませる。できれば10回は繰り返す。

以上をもって、第二部は終了しました。

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