第127回健康教室特別開催-健康企業宣言Step1-銀の認定にむけた勉強会

講演②取り組み事例ご紹介

株式会社スタイル・エッジ
 取締役 花咲 圭祐 様
 ダイバーシティ推進室 担当者様

健康経営は地道に取り組むことで間違いなく成果が得られる

株式会社スタイル・エッジ取締役の花咲様

株式会社スタイル・エッジ 取締役の花咲です。弊社は、弁護士や司法書士、医師といった士業・師業に特化したハンズオン型の総合コンサルティング事業を展開しています。現在の従業員数はグループ全体で約250名、そのうち女性従業員は約6割を占めます。平均年齢は33歳となっており、従業員のライフイベントに直面する機会も多くあります。

そうしたなかで、働きやすい環境づくりとして最初に着手したのが、2014年の社内託児所の設置です。当時まだ20代前半だった創業メンバーの一人である女性従業員が、結婚、出産を経て、職場復帰を希望していました。しかし、待機児童問題で保育園が決まらず、職場復帰できずにいました。であれば、弊社で復帰できる環境を作ろう、ということで社内託児所を設置することにしました。

その後、2017年には子育て支援企業の認定マーク「くるみん」を取得。さらに、2018年に健康優良企業認定制度において「銀の認定」を取得したことが大きなきっかけとなり、2019年には女性活躍推進企業の認定マーク「えるぼし」も取得しました。さらに、健康経営優良法人の認定を取得したほか、新たにダイバーシティ推進室を設置。会社のひとつの組織としてダイバーシティ推進室を発足することにより、「多様な人材の活躍」「全従業員のパフォーマンスの最大化」「社内外に認められる会社づくり」という3つの目的を全従業員に周知し、対外的にもアナウンスしました。その結果、いい意味で経営層にもプレッシャーを感じてもらいながら、さまざまな取り組みを実施できているのではないかと考えています。

実際、ダイバーシティ推進室による取り組みを進めていて感じるのは、ブランディング、採用、コンディション、エンゲージメントという4つの効果です。社外に向けて自社の取り組みを積極的にアウトプットすることにより、採用面でも非常に大きな効果を感じています。たとえば新卒採用ひとつとってみても、この超売り手市場の中で採用計画通りの人数を採用することができました。

また、社内においてもグループウェアやチャットツールを活用して積極的に取り組みとその意義について発信することで、健康に対する意識が根づいてきています。たとえば、朝、自主的にラジオ体操を実施する部署もあれば、12階にあるオフィスまで毎日階段で出社する従業員もいる、といった具合です。このように健康に対する意識が高まることで、身体が健康になるだけでなく、仕事への活力アップにもつながっています。そして、そうした取り組みからエンゲージメント、つまり愛社精神のようなものも生まれると考えています。実は、4年ほど前の弊社の離職率は約20%とやや高かったのですが、それが現在では約10%まで下がっています。

健康経営への取り組みを継続することは確かに難しい部分もありますが、地道に取り組むことで間違いなく成果が得られるということも実感しているので、今後も優良企業を目指して取り組んでいきたいと思っています。

PDCAを回すとともにすべてのエビデンスを残すことが重要

ダイバーシティ推進室にて健康経営を担当しております。私からは、「銀の認定」取得に向けた具体的な取り組み事例をご紹介します。

弊社は、2018年5月7日に「銀の認定」の第一歩でもある健康企業宣言をしました。その際、最初に行ったのが代表である金弘厚雄による健康経営宣言です。具体的な取り組みを始める前に、代表名義のもと健康経営に取り組んでいくことを社内通知し、さらに公式サイトでも対外的に発表することで、スムーズな実践につなげることができました。

ここからは、「銀の認定」取得のために必要な項目ごとに、具体的な取り組み事例をご紹介します。

健康診断100%受診

健診関連の項目は、認定の基準として非常に点数の比率が高いので、満点をとるくらいの気持ちで何に取り組むべきかを考えました。まず、一人ひとりに対する健診の日程を管理部でスケジューリングし、就業時間内の受診を可能とすることで、毎年継続して限りなく100%に近い受診率を達成しています。また、未受診者に対しては労務担当から個別に受診勧奨を行っています。

月1の健康講話の共有

衛生委員会を月1回開催し、従業員の健康や労働環境の整備等について話し合うほか、産業医による健康講話を行い、その動画を社内掲示版にアップロードして、全従業員に共有しています。

社内健康食導入

オフィスで緑黄色野菜を中心とした健康的な食事をとることのできるサービスを導入し、職場の「食」について会社が補助を行うことで、従業員に低価格で提供しています。導入後のアンケート調査では、利用したことのある従業員の全員が継続を希望し、「満足」「やや満足」と回答した人の割合が8割以上に上りました。そのほか、カロリーゼロ飲料の無償提供も行っています。

スポーツイベント開催

従業員への事前アンケートでとくに要望が多かった「肩こりと腰痛の改善」をテーマに、トレーナーを招いて「エクササイズ&ボディケア教室」を開催したところ、非常に満足度の高い内容となりました。また、ヨガやフットサル、ゴルフなどのスポーツサークル活動を行うほか、クライアントも交えたスポーツイベントを開催し、コミュニケーションの推進も図っています。これらの講師への謝礼や運動施設費用等の必要経費のほとんどを会社が負担しています。

喫煙対策

まず、喫煙率を調査し、喫煙率2.7%減を目標に、就業時間内の全面禁煙ルールを施行したほか、禁煙成功者と喫煙者のグループをつくり、禁煙成功法や各自の禁煙状況等の情報を共有しました。その結果、6名が禁煙に成功し、目標を上回って喫煙率を3.3%減らすことができました。

メンタルヘルス対策

産業医による従業員に対してのメンタルヘルスセルフケア研修、管理職に対してのラインケア研修を実施しました。その結果、2017年度のメンタルヘルス不調等の休職者は全従業員のうち2.2%と低い数値となりました。また、社内相談窓口を設置し、従業員にとってより相談しやすい環境づくりにも取り組んでいます。

食・運動・メンタルヘルスに関する月1回の情報配信

健康意識の向上に向けた取り組みの一環として、社内掲示板を通じ、毎月第3火曜日に食・運動・メンタルヘルスに関わるプチ情報を発信しています。こちらも定期的に社内アンケートを行い、より関心が高く、健康にとって有益な情報を発信できるように工夫しています。

弊社では、「銀の認定」を取得したことを機に、継続的に健康経営を推進するように、取り組み内容の幅もかなり広がりました。その甲斐あって、2018年は健康経営優良法人(経済産業省)、スポーツ推進企業(東京都)、スポーツエールカンパニー(スポーツ庁)などの認定も取得することができました。

ここで、私自身の経験を踏まえ、健康経営に関わる実務を行ううえでのコツを紹介します。

≪健康経営を推進するためのコツ!≫

  • 目的がブレないようにする
    認定の取得を目的にしてしまいがちですが、あくまでも目的は従業員の健康意識や満足度を高めていくこと。会社へのメリットは、そうした本来の目的を追い続けることで自然と高められていきます。
  • 一回限りではなく継続的に行う
    認定の取得のために一回限りで取り組みを終えてしまうのではなく、できるところからでもかまわないので、長く継続することが大切です
  • PDCAを回す
    より効果的な取り組みにしていくためには、P(Plan=計画)とD(Do=実行)だけでなく、C(Check=評価)とA(Action=改善)も欠かせません。そこで従業員にアンケートをとることで評価をもらい、改善を加えていきました。
    アンケート調査は確かに手間がかかりますが、従業員の貴重な意見を知ることができるため、今後の取り組みを改善するうえで非常に役立ちます。従業員の関心を高めることで、継続にもつなげやすくなります。
  • すべてのエビデンスを残す
    周知案内文や議事録等をキャプチャーに残しておいたり、イベント開催時には必ず写真を撮影したりしておくと、書類申請のときやこうした講演の際にも非常に役立ちます。「銀の認定」の申請には6カ月以上の取り組みが必要であるため、必ず6カ月以上前のものと直近のものを合わせて残しておくことがポイントです。

弊社は今後もさまざまな取り組みを企画し、PDCAサイクルを回しながら、継続して健康経営に取り組んでいきたいと思っています。みなさまの今後の取り組みに少しでもお役に立てれば幸いです。

「コラボヘルス」と「エビデンス」が2大ポイント

講師:TDCソフト株式会社
管理本部 健康経営推進室
専任課長代理 佐久間 晃子 様

TDCソフト株式会社 佐久間晃子花咲様

弊社は、システム開発を中心としたソフトウェアサービスの提供を得意とする独立系のシステムインテグレーターです。最新の情報技術を提供し、お客様の繁栄に寄与するとともに、社員の生きがいを大切にする、ということを企業理念としています。

さて、まずは銀の認定の取得を目指すうえでのポイントを紹介します。1つめが「コラボヘルス」で、銀の認定は健康保険組合、つまりTJKとコラボして行うことが前提となっています。TJKの健康増進イベント等を社内に周知し、推奨することでも実績となるので、TJKのさまざまな取り組みを武器にすることができます。2つめが「エビデンス」。銀の認定では、取り組みの対象範囲や実施期間が評価されるので、「いつ」「だれが」「だれに」「何をした」ということを記録に残す必要があります。これには、メールや社内ウェブ掲示板等を活用すると非常に有効かと思います。

銀の認定の評価ポイントは全18項目あり、そのうち11項目は健診関係や食生活や運動習慣改善の啓蒙などで、コラボヘルスとエビデンスが重要なものです。このうち、健診受診の勧奨など自社で努力しなければならないこともありますが、データの管理などはTJKと連携できますし、健康教室をはじめとするTJKのさまざまな活動を有効に活用すると、スムーズに取り組みを進めていけると思います。その他の7項目は相談窓口や担当者の設置などの体制や環境整備に関するものです。

メタボ健診の有所見者増加等が健康経営に取り組むきっかけに

健康経営を推進していくためには、社員の気持ちを引っ張っていくことが大きな課題となります。弊社では、従来より「健康管理は経営の重要施策である」という位置づけでやってきたこともあり、健診受診率もかなり高い状態をキープしています。ところが、いざ保健指導等を行ってみると、

  • 長時間残業は…お客様事情だから仕方ない、キーマンだから仕方ない
  • 通院が疎かになるのは…納期間近でそれどころではない、トラブル対応だから仕方ない
  • 夕食が遅くなるのは…遅くなってもよいから家で食べたい、少しでも作業を進めたいので食べる時間が惜しい
  • 「健康」「健康」って…大事なのはわかるけど効果あるの?

といった声が多く聞かれていました。

そうしたなかで、健康経営に取り組むことの重要性を社員が実感するきっかけとなった出来事がありました。2011年、メタボリックシンドロームへの着目により健診項目が変更されると、当社でも有所見者が増加しました。また、ちょうどそのころ、当社の有所見者が入院してプロジェクトに影響が出る事例が発生しました。こうしたことから、健康を大切にする職場づくりを目指そうという意識が高まり、健康管理の基本的な考え方を提示しました。

その後、2012年にはメンタルヘルス疾患による休職者の増加が課題になりました。そこで、メンタルヘルス疾患が発症しにくい職場づくりを目指し、全社員に向けてメンタルヘルスセミナーを実施しました。一般社員に対してはセルフケアを中心に、管理職以上に対してはラインケアを中心に行い、その後も昇格時には必ず受けるという形で今も継続しています。

「TJKウエルネスレポート」を保健指導等に活用

図1は、健康経営に関するこれまでの当社の取り組みをまとめたものです。これらを実行した結果、銀の認定取得に続いて、金の認定を取得し、2018年にはホワイト500に認定されました。

健康経営に関する当社の取り組み
図1.健康経営に関する当社の取り組み

当社では、TJKが発行する「TJKウエルネスレポート」を活用して、保健指導等に役立てています。たとえば、健診での各検査項目の判定別割合をTJK全体の平均値と比較することで、当社の健康課題が明確になります。有所見者の多い項目は何か、検査項目の他にも問診から運動習慣や食習慣等の課題も浮き彫りになりました。

また、健診の総合判定の分布を年代別に比較し、さらに経年でみるという分析も行っています。これによると、生活習慣が固定化する前の20代前半のうちに対策をとり、有所見者予備群が増加しないように歯止めをかけなければならない、という課題が見えてきました。

健康相談窓口を設置し、メンタルヘルス疾患を予防

では、具体的な取組事例についてご紹介いたします。

健康相談窓口:当社では健康相談室を開設し、健康相談窓口を設置しました。本人が不調に気づいたときだけでなく、部下の調子が少しおかしいなという場合にも、気軽にメールで申し込めるような仕組みとなっています。健康相談室には、専属産業医、メンタル専門産業医、カウンセラーが在籍しており、これらの担当者に直接相談することができます。

コミュニケーション推進:社員同士のコミュニケーションを促すために、コラボエリアというものを開設しました。これは、リフレッシュルームの大型版のようなエリアで、ちょっとした打ち合わせをしたり、ランチをとったりといったことに活用してもらっています。

健診の事前教育:健診に向けての事前教育として、健診実施の2カ月前にパンフレットを配布しています。カラフルで目を引くデザインにし、内容もあまり固くせず、「かかとの上げ下げを1日20回やってみよう!」「ずっと同じ姿勢でいないようにしよう!」など、誰でもすぐにできそうなことを提案しています。これらの内容は、TJK健康教室のときに保健師の方からいただいた資料などを活用させていただいています。このパンフレットは、年末調整後、源泉徴収票を配るときの封筒に同封し、全社員に配布しました。

自社が目指す方向性を内外に周知することも重要

先ほど、保健指導時等でよく耳にする社員の声を紹介しましたが、それらの中には会社の施策を見直すことで解決できることもあります。たとえば、キーマンを育成して増やせば一人に負担が集中することがなくなりますし、お客様と良好な関係を築くことで調整がしやすくなるなど、長時間残業という問題の回避につなげることができます。また、そもそもトラブルプロジェクトをなくすようにすれば、トラブル対応は必要なくなりますので、問題を可視化するなどの対策が有効となります。

このように全社でさまざまな取り組みを実施し、多くの問題を解決していくなかで、最終的に残るのが一人ひとりの意識や行動に働きかけるものとなってきます。計画的な通院や規則的な食生活を実践してもらうためには、健康の重みをきちんと理解し、行動に移せるように導いていく必要があります。

そこで効力を発揮するのが「健康経営方針」、つまりトップからのメッセージです。「社員の健康を重要な経営資源の一つであると捉え、働きやすい、やりがいのある会社づくりに取り組みます」というように、会社が目指している方向性を内外に向けて周知することが非常に重要であり、当社でも数年前から実施しています。

健康でいたい気持ちが社員に芽生えるように働きかけ、効果的な支援を行うこと、それが健康運営の担当者の役割だと考えています。そして、個人が主体的に健康活動に取り組めるような環境づくりも大切です。「社員の健康度UPで、個人の価値もUPし、企業価値もUPする」ということで、今後も健康運営を続けていきたいと思います。

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