健康教室バックナンバー

平成29年11月16日(木)~17日(金)、TJK箱根の森において、第121回健康教室を開催しました。今回は宿泊型で、1日目は(有)香取感動マネジメント代表の香取貴信氏を講師にお招きし、「部下の本気に火をつける 情熱のリーダーシップ!」と題してご講演いただきました。2日目は、「健康経営に関する関心と知識を高めるための講演および実技体験」として、TJK職員による講演・実技体験を行いました。その様子をレポートします。

講師 稲垣紀子 氏(TJK東中野保健センター 保健師)

健康経営とは


健康経営とは、社員の健康を重要な経営資源としてとらえ、健康増進に積極的に取り組む経営のスタイルをいいます。つまり、社員の健康管理はコストではなく投資である、という考え方が基本にあります。
従業員の健康維持増進に取り組むことは、単に医療費の削減だけでなく、従業員の活力向上や生産性の向上など組織の活性をもたらし、企業のイメージ向上やリスクマネジメントとしても重要です。

職場での健康管理において、今、注目されているキーワードが「プレゼンティーイズム」です。
病欠や病気休業の状態を「アブセンティーイズム」といいます。これに対し、「プレゼンティーイズム」は、出社はできているものの何らかの不調を抱えていて、業務遂行能力や生産性が低下している状態をいいます。両者を氷山にたとえるならば、水面上に出ている部分がアブセンティーイズム、水面下に隠れている部分がプレゼンティーイズムとなります。
氷山を想像していただくとわかるとおり、水面上に出ているのはごく一部で、水面下のほうが圧倒的に大きな面積を占めています。この比率は、両者のコストの比率に当てはめることができます。プレゼンティーイズムでは、出社はしていても不調のために本来の実力が発揮できず、そこで生産性の損失が発生します。1人当たりの損失は大したことはなくても、同じような状態の社員がたくさんいれば、それだけコストは大きくなります。つまり、アブセンティーイズムによる医療費や疾病休業といったコストよりも、プレゼンティーイズムによるコストのほうがはるかに上回っているのです。

小さな不調を見逃さないことが重要

プレゼンティーイズムの具体例としては、次のようなものが挙げられます。

〈本人も気づいていないような軽度のうつ状態のAさんの場合〉
出社していても体調は悪く、業務中の小さなミスや遅延が続く
⇒残業や休日出勤が発生すると、心身の状態はさらに悪化
⇒残業代や休日出勤手当てなども発生

このように、休むほどではないけれどパフォーマンスが落ちるような状態がプレゼンティーイズムとしてカウントされます。そのほか、プレゼンティーイズムにつながる要因としては、次のようなものがあります。

  • 頭痛
  • ゆううつ
  • 胃の不調
  • 飲酒
  • 疲れ目
  • イライラ
  • 職務満足度
  • 喫煙
  • 肩こり
  • 不安
  • かぜ
  • 運動
  • 腰痛
  • 寝不足
  • アレルギー
  • 食事

こうした不調をできるだけ小さくする、あるいは予防するということも、健康経営の取り組みの1つになります。具体的な対策としては、薬を飲んだり、病院に行くなどしてつらい症状をやわらげる、職場環境や働き方を改善する、生活習慣を見直す、などが挙げられます。
 また、予防のためには、健康診断や超過勤務などのデータの確認、職場のコミュニケーションの改善、相談窓口の設置や周知、健康問題を話し合う場を設ける、といったことが有効です。
社員一人ひとりの健康度をアップすることで生産性が上がり、組織全体の活性化にもつながります。その結果、健康関連のコストが下がるだけでなく、企業のイメージアップ、優秀な人材の確保など、多くのメリットを得ることができます。これこそが、健康経営の目指すところなのです。

健康経営の取り組み方

健康経営に取り組む際のPDCAサイクルは、以下のとおりです。

〈健康経営の取り組み方〉
健康課題の可視化
医療費、疾病休業、生活習慣、職場環境、プレゼンティーイズムなどの調査・集計

課題を絞り込む
健康課題を分析して、対策を実施するべき課題を絞り込む

計画を立てる
健康課題を改善するための計画作り

対策を実施する
計画に基づいて対策を実施する

効果を測定する
実施した対策の効果を測定する

各事業所での実際の取り組み状況について、事前にアンケートをとらせていただきました。その結果、メンタルヘルス対策、健診受診の徹底や周知、長時間労働者への対応などは多くの事業所が取り組んでいらっしゃいました。一方で、特定保健指導の周知に関しては、取り組んでいる事業所がかなり少ないことがわかりました。特定保健指導は、健診と同じ位置づけで取り組むよう、国からも強く指導されていますので、ぜひ周知徹底にご協力をお願いします。

TJKの取り組みと各事業所の事例紹介

ここではTJKの取り組みと、事業所ごとに実践されている事例をご紹介します。

〈TJKの取り組み〉

  • TJKウエルネスレポート(健康課題の可視化)
    健診結果や実際の医療費をもとに、各事業所の健康に関する特徴や分析結果を、TJK全体との比較や事業所規模ごとで比較することなどで、健康課題を可視化する。

     

  • TJKらくらく禁煙コンテスト、TJKスマホウォーキング大会(対策を実施する)
    事業所の健康経営を支援するための活動。TJK主催で対策を実施することで、健康増進への動機づけをサポートする。

〈事業所の取り組み事例紹介〉

  • お菓子のカロリーや飲み物に含まれる糖分量を表示したポスターの活用
  • 「オフィスグリコ」の設置(気軽に間食がとれる半面、食べ過ぎによるカロリーオーバーなどデメリットもある)
  • 社内ホームページの活用(健康関連情報の発信)
  • 自動販売機のラインアップの変更(無糖のお茶類を増やす、糖分を含む飲み物は小さめのサイズにする など)
  • ラジオ体操の実践
  • 血圧計の設置
  • 健康企業宣言を推進するために、年間活動計画を立てる
  • 「会議がすすむ弁当」の提供(弁当に書かれた順番に食べると、野菜 → たんぱく質 → 炭水化物の順に食べることになり、血糖値の上昇をゆるやかにする)
  • 従業員へ野菜を配布する

このように、健康経営の取り組みにもさまざまなやり方があるので、今日お伝えしたことを参考に、今後の活動に役立てていただけたらと思います。

お問い合わせ先:東京都情報サービス産業健康保険組合 健康管理グループ TEL 03-3360-5951
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