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第118回健康教室 第二部 ストレス対処に役立つリラクセーション

 平成28年10月26日(水)〜27日(木)、TJK箱根の森において、第118回健康教室を開催しました。今回は宿泊型で、1日目はコミュニケーションアドバイザーの牛窪万里子氏を講師にお招きし、『自己実現のためのコミュニケーション法』についてご講演いただきました。2日目は、ヘルスケア・トレーナーの砂田真弓氏に『ストレス対処に役立つリラクゼーション』をテーマにご講演いただいたほか、TJK職員の指導による実技体験を行いました。その様子をレポートします。

講師講師 砂田真弓 氏

中央労働災害防止協会 健康快適推進部 研修支援センター 支援課長
ヘルスケア・トレーナー 心理相談員 産業カウンセラー

 

まずはストレスサインに気づくことが大事

 今の社会、おそらくほとんどの方が何かしらのストレスを抱えていることでしょう。ストレスとひと口に言っても、仕事上のことだけでなく、家族のことやご自身のことなど、その要因はさまざまです。そして、ストレスがたまってきたときにまず出てくるのが「ストレス反応」と呼ばれるもので、これは体からのサインともいえるものです。
 身体面では、首や肩の凝り、腰痛、下痢や便秘をくり返す、食欲不振、睡眠障害などが代表的なものです。心理面では、気分が落ち込む、集中できない、イライラするなどがあげられます。また、行動面では、細かいミスが増える、過食、飲酒量が増える、などがあります。こうしたストレス反応をそのまま放置してしまうと、いずれは病気を招いてしまう危険もあります。
 大事なのは、まずは自分のストレス状況に気づくということ。自身の感覚を大切に、「あれ、なんか最近、いつもとちょっと違うぞ」ということに気づけるかどうかが重要です。そして、もしストレスサインに気づいたら、早めにセルフケアをすることが病気の予防につながります。


睡眠不足は確実に心身の不調を招く

 働く人にとっては、時間外労働も大きなストレス要因の一つです。時間外労働なしで、1日の拘束時間が9時間(法定労働時間8時間+休憩時間1時間)の場合、睡眠時間もしっかり確保したうえで、余暇の時間をとることも可能です。しかし、時間外労働が増えるにつれ、まず余暇の時間が削られ、それでも足りなくなると、睡眠時間が削られることになります。
 下のグラフは、週労働時間・睡眠時間と心筋梗塞のリスクの関係を示したものです。週労働時間60時間以下で睡眠時間6時間以上の人を1.0とした場合、同じように睡眠時間をとっていても、週労働時間が61時間以上になると、心筋梗塞のリスクは1.4倍となります。また、週労働時間は少なくても、睡眠時間が5時間以下になると、リスクは2.2倍となります。さらに、週労働時間が長くて睡眠時間が少ないと、そのリスクは4.8倍にもなります。
 これ以外にも、短時間睡眠と心疾患、糖尿病、高血圧のリスクを調べた研究データがありますが、いずれにおいても、睡眠時間が5時間を切るとリスクが上がるということが明らかになっています。また、メンタルヘルスにおいても、睡眠時間が減ると不調者が増えるということがわかってきています。これらのことからも、いかに睡眠や休養をきちんととることが大事かということがわかります。

<労働時間と健康との関係>


日中は交感神経を優位にして活動的に

 生活リズムと深い関わりがあるのが、自律神経です。自律神経には、交感神経と副交感神経があり、活動するときに優位になるのが交感神経、休息するときに優位になるのが副交感神経です。つまり、日中活動するときは交感神経が優位になり、夕方以降は副交感神経が優位になってリラックス状態になる、というのが理想の状態です。
 この両者のバランスが非常に大事なのですが、現代人に多いのは、交感神経が過剰に働き、副交感神経があまり出てこないというタイプです。その原因として、人間関係や仕事のプレッシャーなどの精神的ストレス、音、光、温度などの外的ストレス、慢性的な寝不足、不規則な食生活といったものがあげられます。
 体と心の健康を維持するためには、この自律神経のバランスを整えることがとても大切になります。そこで、朝は交感神経を優位にするために、次のようなことをぜひ実践してみてください。

朝の交感神経に正しいこと ベスト10

  1. 朝の光をしっかり浴びて、体内時計をリセット。
  2. 朝食には糖質とたんぱく質を摂って体温アップ。
  3. 熱めのシャワーで眠気をさます。
  4. 積極的に体を動かし、血流アップ。
  5. 今日のスケジュールをもう一度確認してシミュレート。
  6. 新聞を読んで大脳をしっかり刺激。
  7. アップテンポの曲を流して、交感神経を優位に。
  8. アロマオイルでやる気をアップ(柑橘系の香りなど)。
  9. 毎日の歯磨きは口角を上げて、気分を上げる。
  10. 大きな声で「おはよう!」で1日が始まる。

夕方以降は副交感神経をオンにして休息モードに

 睡眠というのは、ノンレム睡眠(深い眠り)とレム睡眠(浅い眠り)をくり返していて、一つの周期は約90分といわれています。このノンレム睡眠のときに起きると目覚めが悪いので、起きる時間から逆算して、睡眠時間を90分の倍数に設定すると、目覚めもすっきりします。ただし、この周期には個人差があるので、一度試してみて、自分の周期を知っておくとよいでしょう。
 また、レム睡眠のときには体が休んでいるのに対し、ノンレム睡眠のときは脳が休んでいます。日中、脳にはたくさんの情報が入ってきますが、その情報の整理は、ノンレム睡眠のときに行われています。脳の中には格納庫があり、書類を書棚に収めるように、情報をその中に整理していくのです。深い睡眠をとっていないと、この整理が行われないため、必要な情報を探し出すことができなくなります。ですから、脳のためにも、しっかりと睡眠をとることが大切なのです。

 質の良い睡眠をとるためには、夜は副交感神経を優位にしておく必要があります。そのためにぜひ実践したいのが、次のようなことです。

夜の副交感神経にやさしいこと ベスト10

  1. 就寝2時間前にはパソコンとオサラバ。
  2. 夜は絶対に入浴が○。36〜39℃で副交感神経を優位に。
  3. 間接照明を使って、眠りやすい環境作り。
  4. アロマの香りで心を開放(ラベンダー、カモミールなど)。
  5. パジャマに着替えることが入眠儀式。
  6. ホットミルクが眠りを誘う(トリプトファンという成分が眠気を誘う)。
  7. 暑い夏には冷房をかしこく使う。
  8. 仕事関係のことを家に持ち込まないために、楽しめることを見つける。
  9. ペットを抱いて、癒される。
  10. タバコを吸うなら就寝の1時間前まで。

体へのアプローチで脳をリラックス

 ストレスというのは、脳が感じます。ストレスを感じると、脳は緊張し、それが神経を介して筋肉に伝わり、筋肉も緊張します。その結果、首や肩の凝り、腰痛といったストレス反応が起こるのです。
 とはいえ、「脳をリラックスさせましょう」といってもどうしたらよいのかよくわかりません。でも、「体をリラックスさせる」ということであれば、イメージしやすいかと思います。そこで、まずは体の方からアプローチするのです。体の筋肉をリラックスさせると、筋肉の緩和が神経を介して脳にフィードバックされ、脳は「リラックスしていいんだ」と理解し、脳もリラックスする、という仕組みです。では、具体的な方法をいくつか紹介しましょう。

<足をほぐして血流アップ>

●足指開き
  1. 左足と右手で握手をするようにして、指を交差させる(できるだけ根元の方まで差し込む)。
  2. 足の指を甲側に反らせる⇒足裏側に曲げる、という動作を数回繰り返す。
  3. 右手をはずし、左右の手で足の親指と人さし指を持ち、交互に前後に動かす。指を1本ずつずらしながら、小指まで同様に行う。
  4. 足の甲の骨と骨の間を押したり、もんだりする。逆側の足も同様に行う。
 

●足首回し

  1. 左足を右膝の上に置き、左手の親指と小指で左足のくるぶしを挟む。
  2. くるぶしを挟んだまま、右手で足先を持ち、足を回す。外回しと内回し、各50回ずつ行う。逆側の足も同様に行う。
 

●簡単ツボ押し
 次の3つのツボを痛気持ちいいくらいの強さで押す。

  1. 湧泉
    土踏まずの少し上にあるツボで、足の指を曲げたときにできるへこんだ部分。足の疲れに効く。
  2. 足三里
    脚の外側、ひざのお皿の下から指幅4本分下にあるツボ。胃腸の調子が悪いときに押すとよい。
  3. 三陰交
    内くるぶしの頂点から指幅4本分上にあるツボ。女性特有のさまざまな症状に効く。

<肩甲骨周りをほぐす@>

  1. 両腕を頭上に上げ、手の甲と甲を合わせる。
  2. 手を離し軽くこぶしを握り、体に沿ってひじを引き下ろす。ひじを下ろしたときに胸を開き、左右の肩甲骨を寄せるようにする。数回くり返す。
 

<肩甲骨周りをほぐすA>

  1. 目の前で両手を合わせる(できればひじまでつける)。
  2. 観音扉を開けるように、肩とひじを開く。数回くり返す。
 

<肩甲骨周りをほぐすB>

  1. 両手の指先を肩につけ、ひじを体の脇につける。
  2. 指先を肩につけたまま、両ひじを頭の横まで上げる。
  3. ひじができるだけ遠くを通るようにして後ろに回し、元の位置に戻る。数回くり返したら、逆回しも同様に行う。
 

手軽にできる呼吸法&筋弛緩法

 リラクゼーションには、呼吸法もとても効果的です。目を閉じ、おへそのあたりに手をあてて、次の3つのことを意識しながら呼吸をしてみてください。

@ 鼻から吸って口からゆっくり吐く
A 吸った空気の流れを意識する
B 自分が気持ちいいと思うスピードで
 ゆったりとした呼吸を行うと、神経系の興奮が鎮まって気持ちが安定し、結果的に筋肉の緊張も和らいできます。

 リラックス感を味わう方法としては、筋弛緩法もおすすめです。
 ストレスがかかったときには体のいろいろなところに力が入ってしまいますが、とくに力が入りやすいのが、首から肩にかけての僧帽筋、眉間、あご(奥歯)の3カ所です。筋弛緩法は、こうした部分の力を抜くのに有効です。意識的に筋肉にぐっと力を入れたあと、一気に力を抜く方法です。


<筋弛緩法>

  1. 腕を肩の高さで前に伸ばし、軽くこぶしを握り、ひじを水平に後ろへ引く。首をすくめ、眉間にしわを寄せ、奥歯をかみしめる。
  2. 10秒くらいキープしてから、ストンと一気に力を抜く。

心と体の両方に効く「自律訓練法」

 もう一つご紹介したいのが、自律訓練法です。元々は催眠研究から生まれたもので、心身の状態を自分で調整するスキルを習得するトレーニングです。これまでの研究により、心と体の両面にさまざまな効果があることがわかっています。
 方法としては、目を閉じた状態で公式の言葉を唱え、その状況をぼんやりとイメージします。このとき、一生懸命に感じようとするのではなく、あくまでもぼんやりと心と体の感覚を見守り、変化に気づくことがポイントです(「受動的注意集中」という)。そして、この練習を行うとかなりぼんやりするので、最後に必ず「消去動作(取り消し運動)」というものを行います。

<練習を始める前に>
・ 静かな環境で行う
・ ベルトやネクタイなど体を圧迫するものはゆるめておく
・ トイレや気になる用事を済ませておく
・ 椅子(リクライニングチェアでも可)に座るか、あるいは仰向けに寝た状態で行う

<自律訓練法の練習の手順>
練習(1回の時間は1〜2分)
・ 姿勢を作る(力を抜いても安定した姿勢で)
・ 目を閉じる
・ 受動的注意集中(公式の部位にぼんやりと)
・ 公式の暗唱(ゆったりと数回ずつくり返す:ずーっとではない)

【安静練習(背景公式)】
「気持ちが落ち着いている」

【重感練習】
「右腕(みぎて)が重たい」→「左腕(ひだりて)も重たい」→「両腕(りょうて)が重たい」→「両脚も重たい」→「気持ちが落ち着いている」

【温感練習】
「右腕(みぎて)が重たくて温かい」→「左腕(ひだりて)も重たくて温かい」→「両腕(りょうて)が重たくて温かい」→「両脚も重たくて温かい」→「気持ちが落ち着いている」
消去動作(取り消しの動作:目覚めのために)(*)
記録をつける
*夜寝る前に行う場合は、消去動作はやらなくてよい。

<消去動作(取り消し運動)>
  1. 両手を前に出し、グーパーを数回くり返す。
  2. こぶしを握って両手を体に引き寄せ、手を開きながら前に伸ばす、という動作を数回くり返す。
  3. 大きく伸びをしながら深呼吸をする。
  4. 目をゆっくりと開ける
 

香りでリラックス

 先ほど、自律神経の話のときにも少し触れましたが、アロマテラピーもリラクゼーションに役立ちます。アロマテラピーで使われるエッセンシャルオイルの香りは、鼻から吸い込むことで脳に直接作用します。入浴するときに湯船に数滴垂らしたり、ティッシュに1〜2滴染み込ませて置いておき、部屋に香りを漂わせるといった方法が手軽でおすすめです。
 レモン、オレンジ、グレープフルーツなどの柑橘系やミントなどの香りは、気分をすっきりさせるのに効果的です。リラックスのための香りとしては、ラベンダーが代表的です。
 エッセンシャルオイルは、精油の種類によってさまざまな効能が期待できます。ただし、直接肌につけてはいけないものも多くあるなど、取り扱いには十分な注意が必要です。購入する際は専門店へ行って、使い方を確認すると安心です。

 日々の生活のなかで上手にリラックスする術を身につけておくことが、現代を生きる私たちにとっては必要なことだと思います。今日ご紹介したなかでできそうなものがあれば、ぜひ上手に取り入れていただけたらと思います。


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