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健康教室バックナンバー

第115回健康教室 ストレスチェック制度の導入・実施のポイント〜“義務化”を活性化のチャンスとして活かす〜

 平成27年11月10日(火)〜11日(水)、直営保養所「金谷城スポーツセンター」において、第115回健康教室を開催しました。今回は宿泊型で、1日目はTJKメンタルヘルスセンター所長の山ア友丈先生を講師にお招きし、「ストレスチェック制度の導入・実施のポイント」についてご講演いただきました。2日目はTJKの保健師による「TJKデータヘルス計画の取り組み」についての講演につづき、再び山ア先生より『「健康経営」にどう向き合うか』というテーマでご講演いただきました。その様子をレポートします。

第二部

「データヘルスを利用した健康づくり〜TJKの取り組みを踏まえて〜」

講師 小川咲子(TJK東中野保健センター 保健師)

なぜ、保健事業が必要なのか?

 図(1)は、社会保障体制の安定的な持続はどのように成り立っているかを表わしたものです。会社は生産性の向上と社員の健康管理、健保は医療費の適正化と加入者の健康管理という役割を担っています。それらを幹となって支えているのが、保健事業ということになります。言い換えれば、保健事業により社員や加入者の健康を管理し、生産性の向上や医療費の適正化につなげることで、社会保障体制の安定的な持続が可能となる、ということです。


図(1) 保健事業が必要な理由

 


努力次第で健康寿命は延ばすことができる

 近年、よく耳にする「健康寿命」とは、健康上の問題で日常生活が制限されずに暮らせる年数のことをいいます。
 図(2)は、平均寿命と健康寿命との差を示したものです。その差は、男性では9.02年、女性では12.40年となっており、その間は介護を必要とするなど、何らかの制限を受けて暮らすことになります。


図(2) いつまで健康でいられるか?

 


 介護が必要となった主な原因を要介護度別にみたのが、図(3)です。ちなみに、要支援者とは、移動するのにお手伝いが必要だが、食事や排せつなどは一人でできる方。要介護者は、程度の差はあるものの、移動だけでなく、食事や排せつ、身支度を整えるなどにもお手伝いが必要な方となります。
 このグラフをみると、生活習慣病と関節疾患等、生活習慣に関連する疾患が5割以上を占めていることがわかります。これらはいずれも、防げる可能性のある疾患です。つまり、こうした病気の予防に努めることで、健康寿命を延ばすことは可能だというわけです。


図(3) 要介護度別にみた介護が必要になった主な原因

 


生活習慣病の予防が医療費の大幅な削減につながる

 では、実際に医療費がどれくらいかかっているのかを見てみましょう。
 図(4)は、国民医療費と、国内総生産および国民所得に対する国民医療費の比率の年次推移を示したものです。いずれも、年々増え続けていることがわかります。
 また、一般診療医療費の構成割合を疾患別にみたのが、図(5)です。色付きで示してある部分は生活習慣病に該当するもので、全体の3割以上を占めています。


図(4) 増え続ける医療費                      図(5)

 

 TJKの医療費をみてみると、歯科を除く医療費は全体で387億円となっています。そのうち、生活習慣病関連疾患は12%を占めており、金額にすると46.5億円もの医療費がかかっています[図(6)]。
 このことからも、予防できる病気はしっかり予防していくことが大切だということがいえます。


図(6) TJKでは…

 


データヘルス計画─TJKの取り組み

 こうした現状を踏まえ、健保が健康管理事業の柱として作成したのが、データヘルス計画です。まず、特定健診やレセプトデータといった健康・医療情報を活用し、現状を把握したうえで、具体的な保健事業を計画します。そして、(1)加入者に対する全般的・個別的な情報提供(一次予防)、(2)特定健診・特定保健指導、(3)重症化予防、といったことを実践していきます。
 TJKでは、レセプト・健診データ解析の結果に基づき、健康課題として以下の3点を抽出しました。

  1. 人工透析の予防
     人工透析導入のリスクを軽減することが狙いです。
     血糖・血圧ともに「受診勧奨レベル」以上のリスクを持ち、尿蛋白が「異常」の方は237名おり、そのうち90名が未受診となっています。また、過去3年間継続して「人工透析導入のリスク」を持つ対象者は36名となっています。
     こうした方々を対象に、腎機能の低下を遅らせ、人工透析導入の予防、あるいは導入時期を遅らせることを目的に、糖尿病専門医と連携して、未受診の方には病院の紹介を、受診中の方にはフォローアップを行っています。
  2. 糖尿病・高血圧・脂質異常症の高リスク者(高緊急度レベル)、および中リスク者(受診勧奨レベル)の予防
     糖尿病・高血圧・脂質異常症の重症化や合併症、受診勧奨レベルのリスクを軽減することを目指します。
     図(7)は、血糖、血圧、脂質の検査結果を、リスクのレベル別に示したものです。高緊急度レベルは今すぐ病院にかかってほしい方、受診勧奨レベルは緊急性はやや低いものの、放置せずに受診をしてほしい方。そして、保健指導レベルは生活習慣を見直し、予防に努めていただきたい方です。
     下の円グラフは、高緊急度レベルに該当した方の受診状況を示したものです。血糖や血圧、脂質は自覚症状が乏しいため、受診の必要性を実感しづらいこともあり、未受診の方がかなり多いというのが現状です。
     こちらに対する保健事業としては、糖尿病性腎症の指導、血圧が高い方への面接などを行っています。

    図(7) 糖尿病・高血圧・脂質異常症の重症化や合併症、受診勧奨レベルのリスクを軽減する

  3. 禁煙
     喫煙者への禁煙推進が狙いです。
     TJKでは、過去3年間継続して喫煙リスクを持つ対象者は17,523名で、喫煙率は26.6%となっています。
     図(8)は国が行なった調査結果で、リスク要因別に関連死亡者数を示したものです。縦軸がリスク要因で、棒グラフは死因となった疾患別に色分けしています。喫煙は、リスク要因の1位となっており、そのうちでもっとも多い疾患が悪性新生物(がん)となっています。
     喫煙は、喉や肺だけでなく、食道や胃、膀胱のがんの原因にもなります。喫煙は、回避することができる要因なので、健康のためにはやはり禁煙することが重要です。
     禁煙に対する保健事業としては、保健指導中に禁煙指導をするほか、健保全体のイベントとして「らくらく禁煙コンテスト」を開催しています。

    図(8) リスク要因別の関連死亡者数(平成19年)


直営健診センターでの取り組み

 直営健診センターでの取り組みをまとめたのが、図(9)です。
 特定保健指導は、国によって定められたプログラムに則って行っているもので、40〜75歳の方が対象となります(A)。肥満のほか、血圧、血糖、脂質の健診結果、および喫煙のリスクにより、積極的支援、動機づけ支援、情報提供という3段階に振り分け、保健指導を行っています。
 35〜49歳で、肥満のみに該当する方には、早い段階から生活習慣を見直していただけるよう、面接で情報提供を行っています(B)。
 肥満ではないけれど血圧が高いという方には、面接で保健指導を行っています(C)。1日の食事内容を栄養計算し、カロリーや塩分、ミネラルバランスを数値化して、食事の改善ポイントを探るなどしています。また、すでに降圧剤を飲んでいる高血圧の方に対しては、栄養計算をしながらの指導に加え、病院受診のコツなどをお伝えしています(D)。
 血圧だけではなく、その他の生活習慣病で薬を飲んでいる方、および前期高齢者(65〜74歳)の方に対しては、重複受診をしない、服薬の徹底管理など、上手な病院受診や治療のコツなどを指導しています(E)。
 糖尿病性腎症で治療中の方にはフォローアップを行い、疾病をコントロールすることで、重症化を予防しています(F)。また、血糖が高めの方を対象に、宿泊型保健指導を試験的に開始しました(G)。
 このように、直営健診センターでは、国で定められたもの以外にも、若年層や肥満ではない方、治療中の方なども含め、幅広く保健指導を行っています。


図(9) TJK直営健診センターでの取り組み


保健指導は健診データ・医療費の両面で効果あり

 図(10)は、糖尿病の指標となるHbA1cの検査値の推移を、積極的支援に参加した人と参加していない人、それぞれに示したものです。両者を比較すると、積極的支援に参加した人よりも参加していない人の方がデータが悪化していることがわかります。
 また、積極的支援参加者と不参加者で、医療費を比較したのが図(11)です。40〜64歳の平均値でみてみると、両者の差額は、男性で5,340円、女性で7,550円となっています。つまり、積極的支援に参加した人の方がこれだけ医療費を抑えられているということです。
 このように、健診データ、医療費のいずれにおいても、保健指導を受けることにより確かな効果が得られています。


図(10) 健診データでみる保健指導の効果

図(11) 医療費でみる保健指導の効果

 従業員の健康は、生産性の維持・向上につながります。また、リスクマネジメントを徹底し、安全配慮義務を果たすことは、社会的義務や責任を果たすことにもつながります。これらは企業活力を上昇させるためには不可欠であり、そのためにも、社員の健康づくりは重要だというわけです。


TJKの平成26年度の実績

 図(12)は、平成26年度の健診受診率、および特定保健指導実施率を示したものです。全体でみてみると、健診は3割、特定保健指導は7割の方が未受診となっています。
 病気の早期発見、そして重症化を予防するためにも、未受診者には健診を受けるよう本人および被扶養者にも、各事業所でアプローチをしていただけたらと思います。


図(12) TJKの健診受診率・特定保健指導実施率(平成26年度実績)


 健診や保健指導など、健保の保健事業で使えるものは、ぜひとも活用していただきたいと思います。そして、健診を受けるだけでなく、必要に応じて病院受診につなげることも大切です。
 こうした制度を活用していただくためには、健診や保健指導の必要性を認識していただく必要があります。また、健診や保健指導を受けるための時間の確保も必要です。そのためにも、社員の方への意識づけをぜひ強化していただきたいと思います。


個人の努力をサポートできるような環境整備を

 生活習慣を見直したり、改善に取り組んだりといったことは、個人レベルではなかなか定着しづらいものです。そのため、運動、休養、禁煙といった部分において社会環境を整備し、企業が個人の努力をサポートすることで、しっかりと定着につなげていただきたいと思います。


図(13) 職場における健康教育環境の整備


 社員一人ひとりの健康づくりが生産性の向上につながり、その結果、企業の活性化を実現します。TJKのスタッフも、組合員のみなさまの健康づくりのサポートをさせていただきますので、ぜひ各企業において積極的に健康づくりに取り組んでいただけたらと思います。

 

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