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第105回健康教室 アンチエイジングとその格差とは

平成24年7月24日、港区虎ノ門のニッショーホールにおいて、第105回健康教室を開催しました。今回は、形成外科治療の第一線で活躍されている医師の澤田彰史先生をお招きし、正しいアンチエイジングについてご講演いただきました。

●講師 澤田 彰史 氏(東京警察病院 形成外科医)

澤田 彰史 氏(東京警察病院 形成外科医) 1999年群馬大学医学部卒業後、東京大学医学部付属病院形成外科学教室に入局。その後、東京警察病院形成外科にて形成外科医としての研鑚を積む。形成外科以外にも美容外科手術、レーザー治療から寝たきり老人の訪問診療まで幅広い医療活動に従事している。
 「120歳まで美しく健康に生きよう!」をモットーに、多くの人にアンチエイジングの正しい知識の発信を行っている。
 日本テレビの『世界一受けたい授業』『ポシュレ』、フジテレビの『発掘!あるある大事典』、テレビ東京の『てれとSHOP』に出演した他、『日経ウーマン』『夕刊フジ』での執筆、『「脳」が人を犯罪者に変える』(日本文芸社)の監修など各種メディアでも活動中。

老衰で死ぬことはほとんどできない

 人間の平均寿命は約80年ですが、80歳で老衰で死ぬ人はほとんどいません。日本人の要介護期間は平均6年なので、80歳で死ぬ場合、74歳の時点でがん、脳卒中、心筋梗塞のいずれかにかかり、その後、要介護老人となって6年間入退院を繰り返し、6年後の80歳で死ぬということになります。
 本来、人間の遺伝子はだいたい120年で死ぬようにプログラムされています。ではなぜ、限界年齢の120歳まで生きられないのかというと、生きている間に、体の中にだんだん毒がたまっていくからです。この毒がたまらないように生きている人は、見た目も若く、健康で、長生きします。
 このように、いかにして毒がたまらないように生きていくかというのが、アンチエイジングなのです。


同窓会で“老け組”と“若い組”が発生する理由

 同窓会へ行くと、同じ年齢なのに、すごく老けている人とものすごく若々しい人がいます。その差は年々大きくなり、たいてい見た目が老けている人ほど早死にします。なぜ、このような格差がおきるかというと、体の中にためこんでいる毒が多いか少ないかの違いです。

 人間が呼吸をする際、吸った空気のうち約2%は「活性酸素」という物質になります。活性酸素とは、人間が生きていくためのエネルギーを作り出す過程で発生するもので、自動車にたとえれば、排気ガスのようなものです。自動車は排気ガスを外に排出することができますが、人間の場合は排出されずに、少しずつ体の中にたまっていってしまいます。この活性酸素こそが、体にとって毒なのです。
 活性酸素がなぜいけないかというと、活性酸素は人間の遺伝子を傷つけるのです。活性酸素によるこのようなダメージを、俗に「サビつき」といいます。鉄が酸素と結びついて酸化すると錆びますが、人間の細胞の遺伝子も同様で、活性酸素によって酸素が結びつくと、錆びついてしまうのです。
 この活性酸素の害が全身に及ぶことが、いわゆる老化であり、病気にもつながります。活性酸素の害が皮膚に及べばシミ、しわ、たるみとなり、脳に及べばアルツハイマー病、肺に及べば肺がん、血管に及べば高血圧、動脈瘤を引きおこすのです。
 老化は、活性酸素という原因物質によっておきるので、老化は治せる病気の一種である、ということができます。

 見た目の若さと内臓の老化は連動していて、そのことは統計的に証明されています。
 遺伝子が同じである双子を数百組集め、若く見えるチームと老けて見えるチームに分けて、30年間ほど追跡しました。その結果、若く見えるチームのほうが、老けて見えるチームよりも生存率が1.5倍も高かったのです。
 なぜ、ここまで差が出るかというと、活性酸素という毒をやっつける力の個人差が、老化スピードの違いとなって現れるのです。活性酸素をやっつけるパワーを、抗酸化力といいます。抗酸化力が強い人は、見た目も若く、長生きする。逆に、抗酸化力が弱い人は、活性酸素に負けてしまうので、シミ、しわ、たるみもできやすく、血管は老化し、がんにもなりやすいのです。
抗酸化力の個人差が見た目の若さの格差となり、さらには寿命の格差にもなります。つまり、健康とアンチエイジングと美容(見た目の美しさ)の3つは、すべて表裏一体というわけです。


なぜ紫外線を浴びるとシミが増えるのか

 紫外線を浴びると、紫外線のダメージから皮膚細胞を守るために、メラニンという物質が作られます。このメラニンがシミの原因となるわけですが、メラニンは単なる悪者ではなく、紫外線の有毒なエネルギーを体内にとりこませないために跳ね返す反射壁として作られる大切な「盾」なのです。
 紫外線を浴びると遺伝子が傷つけられますが、遺伝子は常に分裂し、ダメージを受けても自分で治す力を持っています。ただ、この自己補修能力も永遠ではなく、30年ほどで破たんしてしまいます。30年間紫外線のダメージを浴び続けているとだんだん復活できなくなり、皮膚細胞は無駄なメラニンを作るようになります。この無駄に作られたメラニンが、シミとなるのです。紫外線を浴びたときに皮膚が赤くなる人は、黒くなる人の4倍のダメージを受けているといわれています。
 紫外線を浴びるほど、皮膚の中の活性酸素は増え、シミ、しわ、たるみの原因となります。シミ、しわ、たるみなど見た目の老化を決定する最大の要因は、生涯に浴びた紫外線の総量です。人間は、20歳くらいまでに生涯浴びる紫外線の50%を浴びるといわれています。日焼け止めを塗らずに紫外線を浴びてよいのは、真夏の昼間なら1日3分まで。それ以上浴びると、皮膚の細胞に確実にダメージが残り、老化が進みます。

 日焼け止めは、SPF値が高いほど紫外線をシャットアウトする力は強いのですが、SPF値が高いものは紫外線吸収剤が入っていて、それが肌に合わない人もいるので、SPF30程度のもので十分です。外出中は汗で落ちてしまうので、3時間おきに塗りなおすことが大切。曇りの日や冬でも紫外線は降り注いでいるので、紫外線ケアは365日必要です。

 シミができたらレーザーで治せばいいと思いがちですが、レーザー治療ではある程度シミを薄くすることはできても、完全に消えることはほとんどなく、コストも高いのでおすすめできません。それよりも、なるべく紫外線を浴びないように予防することが大切です。


なぜ紫外線を浴びるとしわ・たるみが増えるのか

 紫外線はシミだけでなく、しわ・たるみの原因にもなります。
 しわやたるみは、皮膚を支えているコラーゲンという柱が減ることによっておこります。このコラーゲンを破壊するのが、紫外線と活性酸素なのです。
 コラーゲンは、皮膚の中にある繊維芽細胞によって作られますが、繊維芽細胞の働きは年齢とともに衰え、だいたい50歳以上になるとコラーゲンを作らなくなってしまいます。今あるコラーゲンを壊されないようにするには、紫外線を浴びないことと、活性酸素を増やさないことが重要です。
 コラーゲンは、アミノ酸、女性ホルモン、ビタミンCを元に作られます。コラーゲン鍋やコラーゲンドリンクには、アミノ酸は含まれていますが、その他のものは含まれていません。日本人のほとんどの人はアミノ酸は足りているので、鍋やドリンクでアミノ酸ばかり供給しても、女性ホルモンやビタミンCが足りていなければ意味がありません。
 また、無理なダイエットやストレスは、女性ホルモンのバランスを崩す原因になるので、避けることが大切です。

 コラーゲンを確実に増やすのは、ケミカルピーリングに使われるフルーツ酸です。
 ケミカルピーリングとは、弱い酸で余分な角質を落とし、肌の再生を促す施術です。元々は吹き出物の治療のために行われていたものですが、肌の老化を抑えるにもいいということで、美容クリニックでも行われるようになりました。たしかに効果はあるのですが、1回につき5000円ほどかかるうえ、複数回受ける必要があります。


なぜ太ると老化が進むのか

 肥満は、老化の原因となります。
 太ると、高血圧、糖尿病、高脂血症になりやすくなりますが、これがいわゆるメタボリックシンドロームです。メタボリックシンドロームになるとがんにもなりやすくなり、男性ならばED(勃起不全)、女性なら不妊症にもつながります。
 太ると、太った細胞から悪玉アディポカインという毒が分泌され、これが体内に増えると活性酸素を増やす原因となります。そのため、肥満は老化を促進させるのです。

 人間は、30歳を過ぎると1年間に1%ずつ筋肉量が減ります。筋肉量が減ると基礎代謝が下がります。30歳を過ぎると急に太りやすくなるのは、このためです。基礎代謝は、1日の消費カロリーの約70%を占め、運動による消費カロリーを上回っています。基礎代謝が下がらないようにするには、筋肉を保つことが大切です。
 運動は30分以上続けなければ脂肪は燃焼しない、というのは間違いで、30分間続けて運動しても、5分間の運動を6回行っても同じです。
 手軽にできる運動としておすすめなのが、1日5分、階段を上ることです。階段を上るときの消費カロリーは思いのほか多く、テニスやサッカーに相当するくらいのカロリーを消費します。エスカレーターやエレベーターを使わず、移動はすべて階段を使うようにするだけでも、必要最低限の運動量を確保できます。
 階段を上るときには、太ももの前面にある大腿四頭筋のほか、お尻にある大臀筋を使うので、ヒップアップにも効果があります。

 ダイエットで絶対に避けなければいけないのが、断食ダイエットです。断食すると、人間の体は飢餓モードになり、皮下脂肪よりも先に筋肉や骨を溶かして、エネルギーとして使います。筋肉が減ると、基礎代謝が落ち、カロリーを消費しづらくなってしまいます。そのため、元の食事に戻したとき、以前よりも太りやすくなってしまうのです。これが、リバウンドです。
 もっともおすすめなのが、置き換えダイエットです。必要な栄養素がとれて、なおかつ低カロリーの粉末を水に溶かし、食事の代わりに飲むというものです。空腹感を感じるのは最初の3日間だけで、それを過ぎるとあまりお腹がすかなくなります。


“活性酸素に負けないカラダづくり”こそがアンチエイジング

 活性酸素をやっつける抗酸化力には、個人差があります。その格差を生み出しているのは、遺伝的な要素と環境的な要素で、これらが影響を及ぼす比率は、遺伝的な要素を1とすると、環境的な要素は3となります。つまり、環境的な要素のほうがずっと大きいので、老化の個人差を挽回することは十分可能なのです。

 環境的な要素でもっとも大きいのは、食生活です。アンチエイジングにもっとも適しているのが沖縄料理で、3つの特徴があります。
 一つは、野菜が豊富で、ビタミンなどの抗酸化物質がたくさん含まれていることです。日本人の野菜の平均摂取量は200gほどですが、1日350gとるのが理想です。
 二つめの特徴は、食物繊維が豊富な野菜、果物、海藻、豆類が多く含まれていること。食物繊維は、腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌を減らしてくれるので、腸のアンチエイジングができます。さらに、腸の中で脂肪や糖分、コレステロール、活性酸素などを吸着し、便として排泄してくれる作用もあります。
 食物繊維は、日本でも急増中の大腸がんの予防にも効果的です。食物繊維は、根菜類や果物などのスジっぽいもの、とろろや納豆、海藻などのネバネバしたものに多く含まれます。カロリーもほぼゼロなので、ダイエットにも適しています。
食物繊維が不足すると、便秘の原因となります。便秘すると、活性酸素が腸内であふれ、肌荒れを引きおこすので、便秘解消のためにも食物繊維は積極的にとりたいものです。
 三つめの特徴は、肉よりも魚をたくさん食べていることです。
 なぜ魚がいいかというと、DHAやEPAという油を含んでいるからです。冷たい海の中で暮らす魚の体内を流れるこれらの油は、温度が低くてもサラサラ流れるように作られていて、人間の体内でも、血液の中をサラサラと流れてくれるのです。さらに、悪玉コレステロールを下げる働きがあるので、太りにくい油といえます。
動物性たんぱく質は、肉と魚を1:1でとるのが理想的です。

 納豆もおすすめの食材で、二日に一度は食べるとよいでしょう。心臓病やあらゆるがんの予防になるほか、美肌にも効果的です。納豆に含まれる大豆イソフラボンが女性ホルモンと似た働きをし、しわも改善してくれます。さらに、ナットウキナーゼという食物繊維も含まれています。
 避けたいのは、ファストフード、スナック菓子、ケーキ類、ラーメンなどです。これらには、活性酸素を増やすトランス脂肪酸が多く含まれているので、なるべくとらないようにしましょう。


ベストな“見た目のアンチエイジング”は?

 スキンケアでもっとも効果的なのは、ビタミン誘導体を顔に塗ることです。ただし、とても高価なため、一般の化粧品にはほとんど含まれていません。美容クリニックなどで、ドクターズコスメというかたちで購入することができます。
 また、先ほども触れたように、しわ・たるみ・吹き出物にはケミカルピーリングが効果的です。同様のことを、酸ではなくアルカリで行っているのが、温泉です。
 これらを利用するのもよいのですが、それ以前に、しっかり紫外線をケアする、食べ物でコラーゲンを減らさないようにするなど、体の中と外の両方から予防することが大切です。


サプリメントは何を飲めばよいのか

 体を錆びつかせる活性酸素は毎日発生し、それが老化の原因となります。活性酸素をやっつける抗酸化物質は、食事からバランスよくとるのが理想ですが、それが難しい場合は、サプリメントを利用するとよいでしょう。サプリメントは、特定のものを集中的に飲むのではなく、いろいろなものをまんべんなくとるようにしましょう。また、気づいたときだけ飲むのではなく、毎日継続して飲むことが大切です。

 サプリメントにはさまざまな種類があり、どれを飲んだらいいか迷ってしまうと思いますが、まず最初におすすめなのがビタミンCです。
 抗酸化物質の代表ともいえるもので、安価なうえ、通常量の10倍飲んでも体に害はなく、安心して飲めるサプリメントです。ただ、飲んで5、6時間ほどで尿として出てしまうので、体内にあるうちにビタミンCの働きを助けるビタミンBとEを一緒に飲むとよいでしょう。
 次におすすめなのが、体の中でビタミンAに返還されるβカロテン。βカロテン単独で飲むとがんになるリスクが少しだけ上がるという報告がありますが、ビタミンB、C、Eと合わせて飲めば、問題ありません。以上は、比較的安価なサプリメントです。
もっと他の種類も飲みたいという人は、以下の順に増やしていくとよいでしょう。

  1. コエンザイムQ10:ビタミンの働きを助け、がんの抑制効果も期待できる。
  2. トマトリコピン:トマトに含まれる成分。ビタミンCを上回る抗酸化力を持つ。
  3. ポリフェノール:赤ワインに含まれる成分。強力な抗酸化力がある。
  4. アスタキサンチン:カニ、えび、サケの赤い色素。強い抗酸化力を持つほか、眼病予防にも効果がある。
  5. ルテイン、葉酸:いずれも抗酸化力が高く、副作用もない。
  6. ビタミンD:基礎代謝を上げ、太りにくくやせやすい体質をつくる。
  7. αリポ酸:ほうれん草に含まれる成分。ビタミンD同様、太りにくくやせやすい体質をつくるほか、慢性疲労にもよい。
  8. DHA、EPA:血液サラサラ効果があり、コレステロールを下げる。
  9. りんごペクチン:食物繊維を豊富に含む。

 これらの成分はすべて、活性酸素をやっつけ、体を錆びつかせないための抗酸化物質です。
 サプリメントは、1日1回飲めばいいというものも多くあります。しかし、活性酸素は24時間体内で発生することを考えると、常に活性酸素をやっつけられるよう抗酸化物質が体の中を巡っている状態をつくったほうがよいといえます。そのためには、3〜4回に分けて飲むようにしたほうがよいでしょう。
 サプリメントは病院で処方してもらうのがもっとも安心ですが、保険はきかないので、ドラッグストアなどで購入してもよいでしょう。ただし、その際はきちんと原産国が書いてあるものを選ぶようにしましょう。
 体の中に活性酸素が増えないようにするためには、食生活に気をつけることが大前提。サプリメントを飲んでいるからといって、食生活をいい加減にしていたのでは、まったく意味がありません。あくまでも活性酸素を増やさない食生活を心がけ、そのうえで補助的にサプリメントを取り入れるようにしましょう。

 最後にまとめると、アンチエイジングの3原則は、「焼かない」「サビない」「太らない」。
 焼かないようにしっかり紫外線ケアをして、サビないよう抗酸化物質をとり、太らないように1日5分階段を上る。活性酸素のダメージを受けてしまった場合は、ビタミン誘導体、ケミカルピーリング、サプリメントという方法もありますが、あくまでも“予防”が大切であるということを忘れないようにしましょう。

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