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第93回健康教室 ビジネスパーソンのスポーツと健康管理 IT業界の社内で活用できるストレッチ

ビジネスパーソンのスポーツと健康管理 IT業界の社内で活用できるストレッチ平成20年7月2日(水)、中野サンプラザにおいて、第93回健康教室を開催しました。今回は、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員の石橋秀幸先生をお迎えして、「ビジネスパーソンのスポーツと健康管理」と題し、体のバランス、肩と腰の柔軟性のチェック法、社内でできる簡単なストレッチなどについてご教授いただきました。

●講師 石橋秀幸 氏●講師 石橋秀幸 氏

広島県出身。慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。日本体育大学体育学部健康学科卒。慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科卒。1987年、広島東洋カープ入団(トレーニングコーチ)。1995〜1996年、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター訪問研究員。1997年、メジャーリーグのボストン・レッドソックス留学。2000〜2002年、広島東洋カープ一軍トレーニングコーチ。2003年、トレーニング指導を行うホロスクリエイション設立、代表就任。著作に『SPORTS VISION スポーツビジョン〔第2版〕−スポーツのための視覚学』(共著/ナップ社)、『高校生のためのBaseball Exercise』(共著/ベースボールマガジン社)など多数。

 私は長年、プロ野球選手のコンディショニングを調整するトレーニングコーチを務め、現在は大学でスポーツ医学の研究を行っています。本日はそのような経験を踏まえ、スポーツと健康管理についてお話しするとともに、簡単なストレッチやトレーニングをご紹介したいと思います。

 健康の重要性についてはよくいわれます。しかし、「健康になる」ことがゴールではありません。「生活の質を上げる」ことこそ大切なのです。加齢によって私たちの体にはさまざまな変化が生じます。生活習慣の中にスポーツやストレッチを取り入れ、継続することで、楽しく年齢を重ねていきましょう。

普段と違う目の動きで目の疲れを解消しよう

 IT業界の方にはとくに、目の疲れ、肩のこり、腰の痛みなどを感じている方が多いのではないでしょうか。

 まず目についてお話ししますと、平面を見ているときには、人間の目は動きません。最近、「マジカルアイ」といわれる画像が人気です。これは二次元の画像を目の焦点をずらすことによって三次元に見る、つまり立体視ができるものです。視力の回復に効果があるといわれるのは、目の水晶体を動かす機能を高めることによって、目の疲れが解消されるからです。

 そのほかにもいつもと違った目の動きが必要なことを行うのも、目の疲れの解消に有効です。たとえばアメリカの野球選手は、横書きに書かれた数字を左から右ではなく、逆に読んだりするそうです。この方法はシアトルマリナーズのイチロー選手も行っていると聞いています。

 普段と反対の動きが疲れの解消になるのは、目に限ったことだけではありません。右と左で打つスイッチヒッターには腰痛が少ないといわれています。これは両方向のスイングを行うことによって疲労が取り除かれているからでしょう。反対の動作をすることが腰痛の積極的な予防法になっているのです。肩と腰の柔軟性のチェック方法とストレッチについては後ほどご紹介しますが、この点は覚えておいてください。

【コラム】 日米で違う“見る”概念

 “打撃の神様”といわれた川上哲治氏(元読売ジャイアンツ)は、好調時に「ボールが止まって見える」という有名な言葉を残しました。これに対して、イチロー(現シアトルマリナーズ)選手は、メジャーリーグ新記録の月間50安打を達成したとき、「ボールが動いて見える」とコメントしています。

 どちらも、一流の野球選手はボールをよく見て打っていることを表していますが、正反対のような表現がされているのは、日米では“見る”概念が違っているということでしょう。

 日本の野球選手はボールをよく見て打つことを、「ボールを引きつけて打つ」「ボールを呼び込んで打つ」など自分を主体にして表現することが多いようです。しかし、アメリカにはこのような表現はありません。また、アメリカの選手はボールを見送るときは「ボールがキャッチャーミットに入るまでよく見る」ことを徹底しています。これは、自分のイメージのストライクゾーンと実際のズレを確認するために重要だからです。

自分の体のバランスをチェックしてみよう

 ここで、人間の体の「中心線」について考えてみましょう。立っているとき、頭から真っ直ぐに体の中心を線が通るような姿勢が理想的な姿勢です。しかし、実際にはどちらかの足に体重をかけて立っていることが多いものです。寝返りをうつ、足を組んで座るなども、体のどちらかの側に体重をかける動作です。このような動作を繰り返すことによって、中心線のゆがみは大きくなっていきます。

【図A】で体のバランスをチェックしてみましょう。各動作の後は、目を閉じて10秒間静止します。(1)から(5)へと数字が進むほど難しい動作になります。体重を股関節にのせるようにすると、体が安定します。バランスのコツは股関節にあることがイメージできたのではないでしょうか。

【図A(5)】は腰痛チェックにもなります。ヘルニアなどがあれば、つま先は上がりません。この姿勢でしびれがあるようならスポーツは禁止ですので、目安にしてください。

【図A】体のバランスチェック

体のバランスチェック(1)手を真っ直ぐ下に下ろして立つ。足の幅は肩幅くらいで。

(2)(1)の姿勢から腕を交差させて胸に当てて上体を安定させ、片膝を股関節の高さまで持ち上げて片足で立つ。

(3)(2)を反対側の膝で行う。


体のバランスチェック(4)(1)の姿勢に戻り、両かかとを上げる。

(5)(1)の姿勢から両つま先を上げる。

 次に、肩と腰の柔軟性をチェックしてみましょう。柔軟性を高めることは、肩こりや腰痛の予防になります。そのためには、まず自分の体の状態を知ることが大切です。

 肩の柔軟性は【図B】の方法でチェックします。親指が肩甲骨の間まで届かなければ「硬い」。よく使う利き腕のほうが硬いのが普通で、左右で多少の違いはありますが、左右差が極端なら要注意です。

 腰の柔軟性は【図C】の方法でチェックします。【図C】の評価が要注意の場合は腰痛予備群、あるいはすでに、痛みがある方もいらっしゃるでしょう。痛みや違和感がある場合は、症状がどの程度かを確認しましょう。症状が重ければ安静が必要ですが、そうでなければストレッチが効果的です。ストレッチは痛みの予防だけでなく、治療にも役立ちます。

【図B】肩の柔軟性のチェック法

肩の柔軟性のチェック法

(1)片手を背中に回し、手の甲を背骨につける。親指を立てて、上がるところまで背骨に沿って上げる。手を替えて行う。
(2)背骨と左右の肩甲骨までの距離を第三者に測定してもらう。

[評価]
(1)親指が肩甲骨の間まで届かなければ「硬い」。片方は上がっても、もう片方が上がらない、片方だけ痛みがある、などは要注意。
(2)背骨から各肩甲骨までの距離の平均は6cm。9cm以上離れていたら円背(ねこ背)。また、左右で1cm以上差がある場合は要注意。

【図C】腰の柔軟性のチェック法

腰の柔軟性のチェック法

(1)両膝を伸ばして仰向きに寝る。そのまま片足を上げて角度を目算する。
(2)両膝を伸ばしてうつ向きに寝る。片膝を曲げて、かかとをおしりに近づける。かかととおしりの間の距離を指で測定。
(3)両足を投げ出し、膝を伸ばして座る。両腕を伸ばして体を前屈させ、つま先からどれだけ手の先が出るかを見る。

[評価]
(1)90度(以上)ならOK。60度以下なら要注意。
(2)かかとがおしりにつかなくても、指1〜2本の距離であればOK。指5本以上の距離は要注意。
(3)つま先より指の先が出ればOK。つま先に届かなければ要注意。

会社でできる簡単で効果的な肩と腰のストレッチ

 それでは、【図D】【図E】で、社内でできる肩と腰のストレッチをご紹介しましょう。いずれも、椅子に座ったまま手軽にできる方法です。気をつけていただきたいのは、ストレッチにウォーミングアップ効果はないということです。ストレッチの前には、階段を上り下りする、廊下を歩くなど、少し動いて体を温めておきましょう。

 ストレッチ中には呼吸を止めないことも大切です。横隔膜の動きに合わせてゆっくりと呼吸してください。例えば腕を引いて伸ばすストレッチなら、引くときに息を吸い、伸ばすときに息を吐くことがポイントです。また、ストレッチの際には、先ほどお話しした中心線を意識した姿勢で行ってください。

 以上は、昼に行うと効果的なストレッチですが、このほかにも、朝(起床時)や夜(就寝前)に行うのが効果的なストレッチもありますので、併せてご紹介します。【図F】は筋肉を目覚めさせる朝のストレッチ、【図G】は疲労をとる夜のストレッチです。今日はストレッチを中心にご紹介しました。生活習慣の中に取り入れて継続するきっかけにしていただければと思います。

 なお、ストレッチで柔軟性が確保できたら、さらに健康に積極的になるためにトレーニングを行うことをお勧めします。【図H】にいくつかトレーニングをご紹介しました。お時間のあるときにお試しください。

【図D】肩のストレッチ

肩のストレッチ(1)手を真っ直ぐに体の横につけ、両肩の上げ下ろし(息を吸いながら上げ、吐きながら下ろす)を10回。同様に右肩だけ、左肩だけを各10回。

(2)胸の前で両手を組み、息を吐きながら腕を前にゆっくりと突き出し(背中は丸まった状態)、息を吸いながら戻すを10回。

【図E】腰のストレッチ

腰のストレッチ(1)手をグーにして、同じ側のおしりをたたいて刺激する。手を替えて行う。各5回。

(2)背もたれの座面の片端を両手で持って、手で持っている方向に体を回す。次に手と反対側を向く。もう一方の側でも行う。各3回。

【図F】朝のストレッチ

朝のストレッチ

(1)ふとんの上で寝たまま、足の指をグーパー(ふくらはぎのけいれん予防)してから、思いっきり背伸びをする。
(2)両手と足を上げて5秒間くらいブラブラと動かす。

【図G】夜のストレッチ

夜のストレッチ

(1)正座をして膝の前で手のひらの付け根を合わせた姿勢から腕を前後に開きながら前傾する。腕の前後を替えて行う。
(2)よつんばいの姿勢から、息を吸いながら肩甲骨を広げるように背中を引き上げる。次に息を吐きながら、肩甲骨を閉じるように背中をそらせる。
(3)仰向けになって、片足を曲げて足を手で持つ。呼吸は自然に行い、背中は浮かせない。足を替えて行う。

【図H】トレーニングの例

トレーニングの例

(1)背中のトレーニング:太ももの前に手を置き、手のひらを下にしたまま肩の高さに上げる。
(2)肩のトレーニング:両腕のひじを伸ばしたまま、息を大きく吸いながら肩甲骨を引き寄せ、息を吐きながら、前に押し出すように引き離す。
(3)腹筋・背筋のトレーニング:椅子にすわったまま、両腕をガッツポーズの状態にして上半身を左右にひねる。

お問い合わせ先:東京都情報サービス産業健康保険組合 健康管理グループ TEL 03-3360-5951
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